投資をはじめるにあたり、「この投資信託は売れている」「人気がある」と聞いた場合、危険信号だと思ったほうが良いと、『ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』著者でCFPの小山信康氏はいいます。株式投資には人気投票的な性質があるにもかかわらず、いったいなぜ「人気=危険なのか」。ほかの投資家から“カモ”にされないため、知っておきたい「残念な事実」をみていきましょう。
「売れている投資信託」には要注意!?…投資で“カモられる人”が気づいていない「残念な事実」【CFPの助言】
人気のアメリカ株式で運用する投資信託はどうか?
ここ数年、アメリカの株式で運用する投資信託の人気が高まっています。なかでも、「S&P500」に連動する運用を行う投資信託に人気があります。
[図表2]は、2023年11月までの30年間のS&P500の推移です。リーマンショック等の急落局面はありましたが、この30年のパフォーマンスは右肩上がりで推移しています。
[図表2]を見れば、長期投資にうってつけの資産と考えるのは当然なのかもしれません。
このような値動きを背景として、ここ数年、SNSや雑誌等で「S&P500」への投資が推奨される機会が増えています。しかも、2023年は円安ドル高の進行がパフォーマンスを後押ししました。
誰もが認める通り、アメリカは世界一の経済大国です。世界を代表する企業も、その多くがアメリカに集まっています。日本のように人口が減少していく不安もない上、新興国のようにクーデターが起こるようなリスクも高くありません。
「世界の株式の中で、リターンとリスクのバランスがもっとも良いのがアメリカの株式」と考える人がいても、仕方ないことでしょう。筆者自身も、アメリカの株式への投資は避けて通ることができないと考えています。
しかし、妄信的にアメリカの株式の値上がりに期待することには注意が必要とも感じています。
[図表3]は、1989年12月末までのTOPIXの推移(30年間)です。
S&P500の推移に似ていると思いませんか? ちなみに、この当時は「ジャパンアズナンバーワン」という言葉も生まれ、日本経済が世界を引っ張っていると、日本人の多くが考えていた時代でした。
ところが、その後は「失われた10年」、「失われた20年」「失われた30年」と長い経済低迷の時代が続き、株価も低迷しました。
ここ数年、株価もだいぶ回復してきましたが、30年以上経った今でも、TOPIXは最高値を更新していません。
なお、現在では世界第2位の経済大国となった中国の上海総合指数も、2007年に最高値をつけて以来、現在は半分程度の水準です。
はたして、アメリカは日本や中国と違うのか、慎重に考えてみる必要はあるでしょう。
小山 信康
CFP®
1級企業年金総合プランナー