日本の花見文化に世界が注目

梅はもともと中国から入ってきた植物ですし、桜は日本だけでなく欧米からアフリカまで広い地域で咲きます。そして、その咲く花を眺める風習はどこの国でも存在します。

しかし、日本人のように、感謝の酒を捧げたり、花の下で長時間宴を楽しんだりする民はまずいません。日本の花見は世界でも独特の文化なのです。筆者はコロナ前にはロンドンで着物店を営んでおりました。その折英国人に誘われて、桜等々が咲きほこる公園を散歩したことがありますが、本当に散歩するだけでした。日本人のようにそこにシートを敷いて、お弁当を広げ、長時間花のそばで時を過ごす人は見当たりませんでした。

こんな行動を自然にできるのは、日本人の胸には、和の心が宿っているからだと思います。和の心とは万物に神様が宿ると信じて感謝する心です。日本という国は、温暖で種を蒔けば作物に恵まれ、また島国で外敵に荒らされることもなかったので、隣人と手を取り合い、自然の恵みを享受して生きてくることができたのです、だから我々は万物に神様を感じ感謝する心を持ちえたのです。

我々にとって、梅は薬草であり災いを払ってくれる神木、また桜は「さ神さま」という山からいつも我々を見守っていて下さる神霊が宿る木です。つまり、我々の花見は、単に花の美しさを感じるだけではなくて、我々の命を守り支えて下さっている花木への感謝の気持ちを確認する時間なのです。そのために自ずと花木のそばで、ずっと時を過ごそうとするのです。

昨今は、日本の花見を楽しみに入国してくる外国人が年々増えています。一度日本の花見を体験してみると、楽しいだけでなく心が洗われると、口コミでどんどん拡がっているのです。

我々にとっては、当たり前の行事である花見、今世界レベルで自然破壊の危険が深刻化するなかで、花見に流れる、和の心が注目されているのです。
 

池田 訓之
株式会社和想 代表取締役社長