改めて考えると、なぜヒトの排せつ物の基本カラーは茶色なのでしょうか? その答えは、高校生物で習う「肝臓」の知識に隠れていました。伊藤和修氏の著書『大人の教養 面白いほどわかる生物』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、見ていきましょう。現在の高校生物の教科書に準拠した内容ですので、教養にしては少々詳しすぎる部分もあります。しかし、受験対策をするわけではないので、「これも覚えなきゃ!」というプレッシャーはありません。ややこしいと感じる部分は、サラっと読み飛ばしてしまってOKです。
<前回記事>
【大人の教養】「DNAの複製は、まれに間違うことがあります」…ニュースでよく聞く〈突然変異〉の正体がこれ
成人だと1.2~2.0kgもある!最大の内臓器官「肝臓」
【図表】は、左はヒトを正面から見た場合の臓器の位置関係を示した図で、右は肝臓の基本構造である肝小葉(かんしょうよう。肝臓に約50万個あります!)の断面図です。本稿を読み終えたら、もう一度この図を見直してくださいね。
肝臓は成人で1.2~2.0kgもあり、体内で最大の内臓器官です。肝臓には肝動脈と肝門脈から血液が流入し、肝静脈から血液が流出します。肝動脈や肝門脈は枝分かれして毛細血管になり、肝小葉の中を流れて、中心静脈に集まります。そして、ほかの肝小葉の中心静脈と合わさって肝静脈になります。
肝門脈のほうが肝動脈より太いんです。肝臓に流入する血液量は、肝門脈のほうが肝動脈の約4倍も多いんですよ!
まさに“肝腎”!人体に欠かせない「肝臓の働き」TOP7
肝臓は「からだの万能化学工場」とよばれることもあるくらいさまざまなはたらきをもっていますよ! 肝臓のはたらきのなかで重要なものを挙げていきます。肝臓の重要なはたらきTOP7の発表!! キリがよくないのですが…。
①血しょう中に含まれるさまざまなタンパク質の合成
⇒アルブミンや血液凝固にかかわるタンパク質など、さまざまな血しょう中のタンパク質を合成する。
アルブミンの語源は「albumen(卵白)」です。卵の白身に含まれるタンパク質の多くが、アルブミンです! アルブミンはさまざまな物質をくっつけて、血液の流れに乗ってそれらを運搬しています。
②血糖濃度の調節
⇒血液中のグルコースは肝門脈から肝臓に入り、肝細胞内でグリコーゲンに変えて貯蔵する。また、血糖濃度の低下時にはグリコーゲンを分解してグルコースをつくったり、タンパク質からグルコースをつくり(←タンパク質の糖化)、生じたグルコースを血液中に放出したりして、血糖濃度を調節する。
③解毒(げどく)作用
⇒アルコールや薬物などを、酵素によって分解処理する。
④尿素の合成
⇒アミノ酸を分解したさいに生じる有害なアンモニアを、毒性の低い尿素(にょうそ)に変える。
⑤胆汁(たんじゅう)の生成
⇒胆汁(たんじゅう)は胆管を通して十二指腸に分泌され、脂肪の消化を助ける。
⑥古くなった赤血球の破壊
⇒赤血球の分解産物は、胆汁中に排出される。
⑧発熱
⇒さまざまな代謝により発熱し、体温の保持にかかわる。
胆汁については説明を追加します! 胆汁には胆汁酸が含まれ、これが小腸での脂肪の消化・吸収を促進します。胆汁は、いったん胆のうに貯められ、食物が十二指腸に達すると放出されます。また胆汁には、肝臓の解毒作用によって生じた不要な物質や、ヘモグロビンを分解して生じたビリルビンとよばれる物質などが含まれています。
ビリルビンは強い褐色の色素なんです! ビリルビンの多くはそのまま腸を通って…、体外に出ていきます。これが「う●ち」の基本カラーになるんです。
伊藤 和修(いとう・ひとむ)
駿台予備学校 生物科専任講師
京都大学農学部卒(専門は植物遺伝学)。派手な服を身にまとい、ノリノリで行われる授業では、“「わかりやすさ」と「おもしろさ」の両立”をモットーに、体系的な板書と丁寧な説明に加え、小道具(ときに大道具)を用いて視覚的なインパクトも追求。
著書は『大学入学共通テスト 生物の点数が面白いほどとれる本』『大学入学共通テスト 生物基礎の点数が面白いほどとれる本』『大学入試 ゼロからはじめる 生物計算問題の解き方』『直前30日で9割とれる 伊藤和修の 共通テスト生物基礎』(以上、KADOKAWA)、『生物の良問問題集[生物基礎・生物] 新装版』(旺文社)など多数。