2020年、グリニッジ高校の3年生が『Roblox』というゲーミングプラットフォームでゲームの制作を行い、200万円を超える収益を得ました。同プラットフォームでは、専用のゲームエンジン『Roblox Studio』で制作したゲームを有料で配信できるほか、アバター用のコスチュームなどを販売して収益を得ることが可能であり、現在200万人以上のユーザーがゲームを公開しています。ゲーム制作の過程ではプログラミングや3Dグラフィックのスキルを身に付けられる上、収益を得るために企画・マーケティングのスキルも学べるため、「Roblox」は教育ツールとしても注目を集めています。本稿では、Robloxの熱心なユーザーでもある株式会社シュタインズの代表取締役・齊藤大将氏が、Robloxの事例を軸に、教育ツールとしてのゲームの可能性について解説します。
自作したゲームを「全世界」に公開…プログラミング・3Dグラフィック技術やビジネススキルを学べるゲーム『Roblox』とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

ゲーム制作を通じて“ビジネススキル”も身に付けられる

 教育ツールとしても注目を集めるゲーム制作エンジンRoblox Studio
教育ツールとしても注目を集めるゲーム制作エンジンRoblox Studio

 

Robloxは教育分野でも重要な役割を果たしており、実際に欧米では多くの教育現場でゲームが利用されています。Roblox社の創始者であるDavid Baszucki氏は元々教育者であり、Robloxそのものも教育用のソフトから着想を得たものだといいます。

 

RobloxではLuaというプログラミング言語を使ってコードを書く必要があり、ゲーム開発に使用するRoblox Studioという専用のゲームエンジンの操作にはプログラミングや3Dグラフィックスのスキルを要するため、同じプログラミングでもMinecraftに比べて難易度が高く、本格的です。

 

また、子どものプログラミング教材としては『Scratch』も人気ですが、こちらでも広く活用されているのはアイコンや矢印のような視覚的なオブジェクトを組み合わせるビジュアルプログラミングの言語。

 

Robloxの場合は本格的なテキストプログラミングとそのための言語に関する学習が必要になるため、より高度なスキルを身に付けられるのです。

 

さらに、前述の通り自作したゲームを公開し、プレイヤーからの支持を受けることで収入を得ることも可能です。とはいえ、単に面白いゲームを作れば儲かるという訳ではありません。ゲームで収益を上げるためには「ビジネス」の視点も重要です。

 

200万円以上の収益を生み出したアメリカの高校生は、どんなゲームが流行っていて、どんなゲームが飽きられずに遊ばれ続けるのかなど、ビジネスやマーケティングの視点から、企画・開発を行いました。Robloxによるゲーム制作では、プログラミング等の技術的スキルだけでなく、“稼ぐ”ためのビジネススキルも身に付けられるのです。

 

加えて、普通の習い事とは異なり、親子でゲームを制作し、一緒にプレイすることによって家族の時間を過ごしながら楽しく学習につなげられる点もRobloxの大きな利点だと筆者は考えています。

教育ツールとしてのゲーム…2,000万人以上の学生が開発スキルを身に付ける

Roblox Studioは、教育者から生徒にいたるまで、コミュニティのメンバーに制作やコーディングの仕方を学んだり、簡単に使える無料の制作エンジンで情報を処理したりする機会を提供しています。

 

同社は2015年からSTEM(科学、技術、工学、数学)教育にRoblox Studioを役立てる教育プログラムをサポートしており、とくに欧米では教育現場で使われる事例も増えています。実際に同社が行った「Build It, Play It」というイベントでは、Roblox Studioを使って2,000万人以上の学生が新しい開発スキルを身に付けられるようになりました。

 

このようにRobloxは、子どもたちの創造性を促進するプラットフォームとして機能しています。子どもたちは自分たちでゲームを制作し、ほかのユーザーと共有することで、プログラミングやゲームデザイン、3Dモデリングなどの技術を学んでいます。

 

このプロセスは子どもたちにとって価値ある経験となり、創造性と技術的スキルの両方を育めます。Robloxは、子どもたちが自らのアイデアを実現し、新しい形のコミュニケーションを体験する場所となっているのです。

 

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〈著者〉

齊藤大将

株式会社シュタインズ代表取締役。

情報経営イノベーション専門職大学客員教授。

エストニアの国立大学タリン工科大学物理学修士修了。大学院では文学の数値解析の研究に従事。

現在はテクノロジー×教育の事業や研究開発を進める。個人制作で仮想空間に学校や美術館を創作。