家族やパートナーなど身近な人の死後、のこされた遺族には「大量の実務」が待っていると、『親を見送る喪のしごと』の著者で作家・エッセイストの横森理香氏はいいます。今回、法事のあとすぐに対応が必要な「香典返し」について、喪主が押さえておきたいいくつかのポイントを、筆者の実体験を交えてみていきましょう。
のしは「喪の熨斗(のし)」で!
それは、デパートの金券売り場でのことだった。「お熨斗は、どちらになさいますか?」と聞かれ、私は恐怖に震えた。「喪、喪の熨斗で……」そこから私は地下名店街のルピシアに走った。金券売り場にいく前、そこから送った2件の返礼に、熨斗を付けてほしいと頼んだが、どちらの熨斗か指定していなかったのだ。
時すでに遅く、祝い熨斗がかけられた紅茶セットは発送されてしまっていた。「すみません、ご指定がない場合は、たいていお祝いの返礼なので」とお店の人は恐縮していたが、それは私のミスだった。これからの人は気をつけたほうがいい。
「お詫びの品と、詫び状をそれぞれに送らせていただきます」係の方のミスということにしてくれたが、ほんとうに、恥をかいた。というよりも、迷惑をかけた。
香典は寄付という手もある
ほんとうに大変な思いをし、その顚末をベテラン編集者に話すと、「事前にお香典はお断りしますって案内状に書いちゃう人もいるし、お香典を寄付して、すべてどこどこに寄付しましたって、お礼状に書く人もいるわよ」と教えてくれた。
そーだ、その手があったか! こんな、施主が苦労ばかりする慣習は、いますぐやめるべきなのだ。私は母の香典の残り50万円を、山梨子ども図書館に寄付した。
これは母の腹心、浅川先生がNPO法人を立ち上げ、母と山梨子どもの本研究会の仲間たち長年の夢だった、子ども図書館設立に向けて動き出したものだった。
香典は母のお金なので、母の名前で寄付させていただいた。
横森 理香
一般社団法人日本大人女子協会 代表
作家/エッセイスト