自分が生涯受け取れる年金額について「きちんと把握できている」という人は、実は決して多くありません。「ねんきん定期便を見ればわかる」などと安易に考えている人は、“申請すればもらえる年金”をもらえずに損をしてしまうことも……。「ねんきん定期便には載っていない年金」について、石川亜希子AFPが解説します。
加給年金?なんだそれ…年金月20万円の66歳・元サラリーマン、ゴルフ場で愕然。国が教えてくれない「申請すればもらえる年金」【FPが解説】
加給年金は自分で手続きしないともらえない
加給年金についてようやく理解できたAさん。計算してみると、加給年金額と特別加算額で合わせて年39万7,500円にもなるではありませんか! Aさんの妻Bさんは結婚以来ずっと専業主婦だったため、条件をクリアできていそうです。
慌てて年金事務所に相談し、必要な書類を揃えて手続きすることにしました。さかのぼって受給することができるのは5年までで、Aさんは去年から年金を受給し始めたばかりなのでそちらもクリアできそうです。Aさん、なんとか損をせずにすみそうでホッとしました。
「加給年金」から「振替加算」へ
AさんがCさんから教えてもらった“申請しないともらえない”加給年金ですが、これは配偶者が65歳になって年金を受給するまで支給されるものになります。
Aさんの場合も、Bさんが65歳になって年金の受給が始まったら終了です。たった数年か……と残念に思ってしまうかもしれませんが、以降は、条件を満たせば「振替加算」の対象になります。
振替加算は、加給年金に代わって一定の基準により老齢基礎年金に加算されるものです。
生年月日によって受給できる額は異なり、Bさんのケースだと年1万5,323円となり、生涯受け取ることができます。昭和41年4月2日以降の生まれだと、振替加算の対象にはなりません。
また、Aさんのケースのように、加給年金を受給していれば、基本的に振替加算を受給するための手続きは不要です。しかし「妻の方が年上の場合」など、振替加算を受給するために手続きが必要な場合もありますので注意が必要です。
複雑な年金制度…気になる部分は「年金事務所」に相談
年金制度が複雑になっているのは、あらゆるパターンに対応できるようにするためだといわれています。ツギハギの制度改正が重ねられ、すべてを理解するのは至難の業です。
加給年金についても、65歳になった時点で扶養する家族がいる人にとってはありがたい制度です。もっとも、請求しない限り受け取れないため、Aさんのような場合も多いでしょう。
自分で情報を取りにいかないと損をしてしまう時代になってきています。退職後の人生を豊かに過ごすためにも、どのような選択肢があるか最新の制度を確認し、不明な点がある場合は年金事務所に相談するようにしましょう。
※個人情報保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。
石川 亜希子
AFP