最近の美文字ブームもあり、多くの人が「綺麗な字を書きたい」と考えていますが、上手に書くことは「書道」の楽しみの1つに過ぎません。自身が海外を訪れた際、あるいは海外から日本にやってきた外国人に対し、筆を使って漢字・平仮名・カタカナを書くことで日本文化を実感してもらえることが、書に親しむ醍醐味だといえます。本稿では、前田鎌利氏の著書『世界のビジネスエリートを唸らせる教養としての書道』(自由国民社)より一部を抜粋し、日本文化を伝えるツールとしての「書」について解説します。
伝統文化である「書」をいかに楽しんで日常に取り入れるか
話は変わって、私の教室に通う生徒に「書道は久しぶりですか?」と聞くと、「子どもの頃に学校の授業で習ったけれど、それっきりなのであまり上手に書けません」と答えるのが大半です。
この「上手に書けない」というフレーズが、実は書道を限定的な捉え方にしてしまっているのです。
複数人の生徒にアンケートをとったところ(複数回答可)、昨今の美文字ブームなどもあり、「綺麗な字が書けるようになりたい」と約6割が答えました。それと同じくらいの割合で「筆を持って落ち着いた時間が持ちたい」という解答が約5割ありました。
ところで「綺麗に書けるようになる」を別のいい方に置き換えると、「先生のお手本と似せて書けるようになる」ことを指している場合が大半です。ですが、お手本をトレースしただけでは、書道の魅力のごく一部しか味わえていないのです。
またこの他にも、
「生涯の趣味として書道をずっと続けたい」……約8割
「資格をとって子どもたちに書を教えたい」……約3割
「先生のように自由に作品が書けるようになりたい」……約2割
という結果となりました。上手に書くことは書の一つの側面です。
ぜひ、長く続けることでゆっくりとじっくりと書を楽しんでいただきたい。そして未来を担う方々に書の楽しみを伝えてもらいたい。私はそう思っています。
書には3,000年の歴史があります。そして現代では非常に多種多様な書のスタイルがあります。
伝統文化である書をいかに楽しんで日常に取り入れていただけるか。
グローバル化が進む現代において、海外に行ったときや海外からお見えになられた外国人の方と接した際に、日本文化の素晴らしさをどう伝えるのか。
私たち日本人の誰もが一度は手にしたことがある筆を使って、漢字やひらがな、カタカナを書くことで日本文化を実感してもらうことは、子どもでも、大人でも、書というツールを通して誰にでも行うことができるのです。この本を読んでいただいているあなた自身にも。
もう一度いいます。
「日本人は皆、書が書けますよ」