マウントを取られそうになったとき

マウンティングという言葉を聞いたことがあるでしょう。もともとは、ゴリラや動物界で「お前より俺の力のほうが上だぞ。そばにくるな」と力の差を見せて、相手を威嚇する動作で使われてきました。

それなのに、人間がこれをするから皆さん「いやだなあ」「聞きたくなかった話だよ」となります。私の社会人セミナーでも、「もう同級会はこりごりだ」と嘆くIT会社にお勤めの30代後半のYさんがいます。

22年ぶりに誘われて中学の同級会に出たそうです。同級生が名刺を持って彼のもとへ来て、「有名大手銀行に勤めていて、このごろ為替変動で大変だ」と話しはじめました。

「僕みたいに金融第一線で仕事してないと、なかなかわかりにくいところだけど」と、その言い方が偉そうと感じたそうです。

口角をキュッともちあげて、偉いだろうといった笑みが浮かびます。結婚して嫁の両親が敷地内に素晴らしい家を建ててくれた、という男性も加わり嬉しそうです。

Yさんは違う席に移動したいと思ったけれど、ふたりの自慢ごっこはなんだか聞き手を求めている感じがあり移動できません。「そんなときどうすれば負けた感がなく、むしろお前らとは違う価値がある」といった意思表示をうまくしてスマートに移動できるか、というのがYさんの質問でした。

マウントを回避する「自己表現」の極意

私自身も40年ぶりに同級会に出席してみたら、そんな話題だらけで、「時間損したわ」と感じたことがあります。読者の皆さんも似たような体験があるかもしれません。

そこで内心の「ウンザリ」や「自慢屋だねえ」という不快感をちょっとでも見せたら、実はあなたは賢明ではありません。

顔を輝かして大っぴらに驚きと楽しげな笑顔で、「すごいなあ、立派だね、私もそうなってみたいよ」と言いましょう。そして胸を張り、口笛でも吹きそうな上機嫌な顔をして、別の席へ移動するのです。あなたはこのとき、彼ら彼女らを克服したことになります。その人も称賛された気分になり、恨むことはないでしょう。

内緒ですが、これは私がよく使う自己表現の極意のひとつです。

世の中が行き詰まるほど、自分の価値を大きく見せたいがために、自分より下かもしれない人にマウントを取る人が増えてきました。自分に自信のない、かわいそうな人たちなのです。

賢いあなたは、その挑発に乗らないで笑顔でかわしましょう。

佐藤 綾子
株式会社国際パフォーマンス研究所 代表