電車や街の中で「キッ」とにらまれたとき

怒りんぼうの人が増えている世の中なのでしょうか。ある日のこと、渋谷駅の下りエスカレーターで大変な喧嘩が起きました。

20代後半くらいの男性が、左側で止まっている40代くらいの男性の右側を、ダダっと追い抜いて降りようとして、ちょっと左手が当たったのです。

すると、当たられた人が「なんだお前、謝れよ」と。追い越した男性はそこで謝ればよかったのですが、「うるせーな」と返したから、もう大変です。当たられた男性は彼のあとを追いかけて、ふたりで下の踊り場でまで行って大喧嘩です。

まわりの人たちも「かかわりたくないね」と言いたげな顔で、ふたりを置いて通りすぎていきました。私も約束があったため急いでいたし、女性の身で男性ふたりに話にいく勇気はありませんでした。

でも本当はそのとき、彼に言ってあげればよかったのです。「すみません、とすぐに言って、ちょっとだけお辞儀してニッコリすれば、相手はそんなに怒らなくて済んだはずですよ」と。

にらまれたときにその場を円く収めるコツ

なぜなら、ちょうどその1週間前、満員電車で同じような体験を私もしたからです。満員電車の中で私のバックが前に立っている女性の背中にちょっと当たってしまい、その人が振り返って「キッ」と怒りの目でにらみつけました。

思わず「あ、ごめんなさい」と言いながら、ちょっと目を合わせて小さな会釈を返したら、「いえ、大丈夫です」と彼女が言ったのです。その顔に怒りはまったく感じませんでした。

そこでは何もおきなかったね、という感じでした。その顔を見て、私はほっとしました。

人間の脳は、放っておけば相手を反射します。「ミラーニューロン」の働きです。

※他者の行動やその意図を理解する手助けになると考えられている神経細胞

誰かが「今当たっただろう、なんだその態度は。謝れよ」と目くじらを立てると、相手も「なんだとー」と言ったり、実際に当たり返したりするときもあります。

「にらまれたら、まず言葉で小さく謝ってから笑顔」と、覚えておいてもいいかもしれませんね。

佐藤 綾子
株式会社国際パフォーマンス研究所 代表