私たちは、最初に決めたことに対して矛盾が発生しないように行動する傾向があります。買った馬券が絶対に当たると思い込むことも、その一例です。実際、そのとおりだったということもありますが、もしかするとそれは、単なる「勘違い」なのかもしれません。本記事では、佐藤綾子氏の著書『人生がうまくいく笑顔の教科書 科学が証明する笑顔のパワー』(ごきげんビジネス出版)より、人間が持つ「一貫性の原理」について解説します。
「買った馬券」「発表してしまった婚約者」
のっけから変な実例を挙げます。「買った馬券」「発表してしまった婚約者」についてです。
これは「一貫性の原理」とされるアメリカの心理学者らの研究です。
“自分が既にしてしまったことと一貫していたい、そして、一貫していると人から評価されたいと思う欲求。ひとたび決定を下したり、ある立場を取ると、自分の内からも外からも、そのコミットメント(約束・誓い・契約)と一貫した行動をとるように圧力がかかる”
(『影響力の武器』ロバート・B・チャルディーニ、社会行動研究会、誠信書房)
簡単にいうと、私たちは自分が投資する、あるいは、人に発表してしまった婚約相手はいい人だと思いたがる傾向があります。これが認知のメカニズムの中で働く「一貫性のレール」と呼ばれるもので、認知の間違いのひとつで、人間の勘違いの大きな特徴です。
たとえば馬券で1‐3を買ったとします。1‐3の馬はもともと強い馬です。こうした状況で、馬券を買う前と買ってからでは、あなたの言い方は大いに違うでしょう。
友達に「1‐3は絶対勝つよ。すごいに決まっているよ。見ててごらん、当たったら奢るから」と言うわけです。馬券を買ってしまったので、損をしたくないわけです。違う結果になったら大いに体面が傷つきますね。
同じことが、発表してしまった婚約者にもいえます。
人間は「かわいそう」で「かわいい」
記者会見など開いて、「〇〇さんと婚約しました」と発表してしまったら、さあ大変。〇〇さんがどんなにウソつきでも、これからひどいことをしても、ウソつきだと認めません。認めないというよりは、そのように感じたくないのです。
「私が選んだ人だから、そんなことをするわけはない」と思う、これが一貫性のレールです。
誰にでも起きる現象なので、信じたその人が途中から違うことをしても、私たちは気づかずに、笑顔で「あの人いい人よ」と言い続けます。
やれやれ人間ってなんだかかわいそうで、かわいいですね。
佐藤 綾子
株式会社国際パフォーマンス研究所 代表