「晩産化」が進む日本では、定年間近になっても住宅ローンや教育費が重くのしかかり、家計が火の車……という家庭も少なくありません。中堅電機メーカーの開発部長だった野口さん(仮名)も、そんな家庭のひとり。退職金で住宅ローンを完済したところ、貯蓄がゼロになってしまいました。野口さんに挽回策はあるのでしょうか?ファイナンシャルプランナーである長尾義弘氏が解説します。
月収50万円だった60歳男性、退職金で住宅ローン完済!定年祝いに温泉旅行も…待ち受ける「老後破産」の現実味【FPが破産回避の方法を伝授】
住宅ローンは“完済して貯蓄ゼロ”よりも、「一部繰り上げ返済」がベター
住宅ローンは退職金で返済すべきか、すべきでないのか。ここは意見の分かれるところです。
年金だけの生活になっても住宅ローンが残っている場合は、老後破綻の可能性が高くなります。したがって、できるだけ退職金などを使って完済したほうがいいと考えています。ただ、住宅ローンを完済したあと、貯蓄がゼロになってしまうのであれば、避けたほうがいいかもしれません。
貯蓄ゼロは、けっして望ましい状態ではありません。病気やケガをしたらどうしますか。または、両親の介護やその他のトラブルが起きたときなども困ってしまうかもしれません。突然、まとまったお金が必要になったときに対処できなくなるのです。
そこで、貯蓄がゼロにならないよう、一部繰上げ返済という方法をオススメします。一部繰上げ返済をすると、支払い終わる期間が短くなります。そして、収入が年金だけになる65歳までには、返済を終えたいものです。
ムリに組んだローンは老後に支障…定年までに完済する「返済計画」を
そもそも定年後も住宅ローンが残ってしまうような計画は、あまりよろしくありません。退職金で全部を返済するつもりでいても、退職金が予定より少ない場合もありますし、会社を途中でやめる可能性だって否定できません。もし可能ならば、ボーナスなど余裕ができたときに住宅ローンの繰上げ返済をすることで、将来の負担を少しでも減らすこともできます。
最近は低金利の影響か、住宅ローンを借りすぎるケースが見受けられます。ムリな住宅ローンを組むと、老後の資金計画に支障をきたすこともあるのです。
すでに住宅ローンを組んでいる人は、がんばって返済計画を立てるようにしてください。30代、40代でこれから住宅ローンを組む場合は、くれぐれも借りすぎに注意しましょう。
長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー