世界中で出回るコピー品。その種類は、絵画やトレーディングカード、ファッションブランドグッズなどあらゆるジャンルにおよびます。なかには贋作と知らず高価な値がつくことも。鑑定精度の高さがより一層強く求められるなか、現状のAI真贋鑑定サービスはどの程度の精度なのでしょうか? また、今後贋作の流通をAIの技術で防ぐことはできるのでしょうか?
あの有名絵画が実は…百発百中の真贋鑑定も可能に!? AIが防ぐ「贋作流通」 (※写真はイメージです/PIXTA)

AI真贋鑑定は贋作の流通を食い止めることができるのか?

 

手を替え品を替え現れる「贋作」の流通を、AI技術で食い止めることは可能なのでしょうか。AIが鑑定をおこなうには、真作のデータを学習する必要があります。学習するデータが多ければ多いほど精度が向上するため、サンプル数が少ない場合は精度が落ちることは否めません。

 

トレーディングカードやブランド品など、世界に膨大な数の商品が流通しているものであればサンプル数を増やし精度を高めることは可能です。さらに専門の鑑定士のチェックを組み合わせることで100%に近い鑑定結果が出せるでしょう。実際に多くのAI真贋鑑定は高い鑑定精度を持ちながら、一部は人の目や感覚による鑑定にも頼っているのが現状です。トレーディングカード鑑定の「VSS鑑定」はその代表的なものといえます。

 

なかには現時点ですでに「完全AI鑑定」を謳うサービスもあり、今後ますますその精度の高さを各社が競い合っていくでしょう。

 

すべてをAIが担うことができれば鑑定にかかる時間が短縮され、アプリやWebでの真贋鑑定が加速すると考えられます。とくにフリマアプリへの出品や、買取店での利用拡大が期待できます。

 

しかし「サムソンとデリラ」の例のように、絵画の分野では現存するサンプル数が不足していることが多々あります。本来AIに画像を認識させるには何万ものデータが必要なため、数百のサンプルでは正確に学習することはできません。

 

サンプル数不足の問題を解決するためには、サンプルの取得方法や学習方法の工夫が必要です。

 

たとえばレンブラントの絵画解析で使われた方法では、1枚の絵画をAIが学習しやすいサイズや形に分割することでサンプル数を増やしました。また日本絵画の流派を特定するためには、一度学習したAIにさらにデータを上乗せし、再学習させる方法が採られました。

 

これは「ファインチューニング」という手法で、すでに「型」を知っている状態で再度同じ内容を学習し理解を深めるというもの。このように、絵画の分野でもさまざまな工夫のもと、AI真贋鑑定の精度は日々向上しています。

 

AI真贋鑑定の普及により、ファッションやホビー業界では買取時や購入時に偽物を見抜くことが可能になりました。また、アート業界では過去の作品に対する鑑定方法が日々研究され、AIによって贋作が暴かれることも増えています。AIの進化によって、贋作が市場から姿を消す未来が期待できるのではないでしょうか。

 


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<著者>
吉田康介
フリーライター