近年、飲食業界では人手不足の問題が深刻化しており、その解消が急務となっています。そこで注目されるのが、調理、配膳から来店受付、順番待ちシステム等に至るまで、あらゆるプロセスでの自動化技術の導入です。業務を効率化し、人手不足の問題の解消につながる最先端のフードテックにどのようなものがあるのでしょうか。そして、日本企業のビジネスチャンスはどこにあるのでしょうか。国際的なテック事情に詳しいジャーナリスト・高口康太氏が、最新事情をリポートします。
急ピッチで進む外食業界での「ロボット」の導入…「フードテック」最前線 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本のビジネスチャンスはどこにあるのか?

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

このように、中国では「無人ブーム」の失敗を糧として、安くて高性能な配膳ロボットが開発され、かつ現実的な使い方が見つかるようになっています。膨大なベンチャーマネーが流れ込んだことで、現在では安くて高性能な配膳ロボットを製造できる基盤が完成し、日本をはじめ、世界中を席巻しています。

 

もっとも、こうしたロボットメーカーがその地位を盤石としたとまでは言い切れません。2022年には日本でも多くのロボットを販売している「KEENON」、「Pudu Technology」が大規模なリストラを実施したことが話題となりました。他の企業も、売上を伸ばしながらも赤字がふくらむという状況にあります。

 

パンゴリン・ロボットの宋董事長によると、ほとんどのメーカーは売れば売るほど赤字になる状況です。熾烈な競争が続くなかで単価を上げられないのが要因です。今後はいかに利益を確保するかがカギです。パンゴリン・ロボット自身も厳しい競争に苦しんでいますが、ファブレス(工場を持たない)な他社とは異なり自社工場での製造によるコストダウンに取り組んでいるほか、複数機種の土台部分を共有化することでの開発費用削減、さらには来年にも日本で工場を立ち上げることで「メイドインジャパン」ブランドでの海外市場開拓で打開して行く計画です。

 

このように整理すると、日本は、配膳ロボットという道具が実用化され普及するタイミングをうまくとらえて導入しているといえるのではないでしょうか。そして、日本企業は、この道具をいかに使いこなすかという点で競争をし、ノウハウを蓄積しています。

 

すなわち、日本では、配膳ロボット導入支援の代理店がいくつも誕生しているほか、ロボットという道具をどう使いこなすかという二次開発の分野も盛り上がりつつあります。

 

筆者は2023年12月に東京で開催された「スマートレストランEXPO」を取材しましたが、興味深かったのは、「NECプラットフォームズ」による「POSレジシステム」と配膳ロボットの連携ソリューションです。

 

[画像7]スマートレストランEXPOの模様(2023年12月、筆者撮影)
[画像7]スマートレストランEXPOの模様(2023年12月、筆者撮影)

 

店員の個人端末やテーブルのタブレットとロボットが連携し、食器を下げたい時に気軽にロボットを呼び出すことができます。また、客が会計を済ませると、食器を下げるサポートのため、ロボットが自動的にテーブルに向かいます。システムと連動できるロボットは複数のメーカーに対応しています。ロボットを製造することよりも、「どううまく使いこなすか」にフォーカスしているわけです。

 

まだ普及が始まったばかりのサービスロボットのビジネスですが、日本企業がどのようにノウハウを蓄積し、道具としてのロボットをより使いやすくするためのソリューションを生み出すかにも注目です。
 

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〈著者〉
高口 康太

ジャーナリスト、千葉大学客員准教授。2008年北京五輪直前の「沸騰中国経済」にあてられ、中国経済にのめりこみ、企業、社会、在日中国人社会を中心に取材、執筆を仕事に。クローズアップ現代」「日曜討論」などテレビ出演多数。主な著書に『幸福な監視国家・中国』(NHK出版、梶谷懐氏との共著)、『プロトタイプシティ 深圳と世界的イノベーション』(KADOKAWA、高須正和氏との共編)で大平正芳記念賞特別賞を受賞。