誰もがいずれは直面する「相続」ですが、場合によっては複雑な問題に至ることも少なくありません。「モメる原因はお金よりも相続人の間での気持ちの行き違いや嫉妬など、心の問題のほうが大きい」と、相続専門の税理士として多くの相続を間近で見てきた天野隆氏は言います。天野氏と税理士法人レガシィの共著『相続格差』より、円満相続の秘訣となる考え方を伝授します。
「モメない相続」のために今すぐできることは?
では、モメる相続とモメない相続の違いはどこにあるのでしょうか。
私は、相続する人の考え方が一番重要なのではないかと思っています。「親が私たちに財産を残してくれてありがたい」「お金も大切だけど、親族が仲良くすることはもっと大切」などと物事をプラスに考える「プラス思考」の人ばかりだと、相続はモメません。
一方、「どうも、うちは損している気がする」「妹は親の面倒も見なかったんだから、もっと相続額は少なくていいじゃないか」などと「マイナス思考」の人が多いと、相続はモメる傾向にあります。
[図表1]は、世の中の相続を、大まかに4つのパターンに分けてみたものです。縦軸は考え方の違いで2つに分けており、上が「プラス思考」、下が「マイナス思考」の家族です。横軸は財産の大小によって、右が相続財産の多い家族、左が相続財産の少ない家族です。
こうして4つのパターンに分けたとき、右上は資産家で「プラス思考」の家族になります。財産もあって「プラス思考」という理想的な家族です。もちろんそうした家族は一定数存在しているのですが、なかなかメディアでは紹介されません。
右下は、財産が多くて「マイナス思考」の家族。これは、相続に際して骨肉の争いになる恐れがあります。テレビの弁護士ドラマの題材になるのはこうした家族で、主人公をいじめる意地の悪い人物も登場してきます。実際には、むしろ例外的な存在ですが、珍しいケースがたまに発生するから、ゴシップ記事を賑にぎわせるわけです。
左上は、財産が少なくて「プラス思考」。「お金はそんなにないけれど、それよりも大切なものがあるよね」という、ほのぼの家族といってよいでしょう。
左下は、財産が多くないのにモメる家族。多くない親の遺産をめぐって争う、ギスギス家族です。遺産分割協議がまとまらずに家庭裁判所に持ち込まれるのは、このパターンです。
モメない相続のために今すぐできることは、考え方をプラスにすることが大事だとおわかりでしょう。財産をいきなり増やすのは不可能ですが、考え方を変えることはできます。
考え方を「プラス思考」に変えることで、モヤモヤ相続もすっきりします。ギスギス家族に陥ることなく、ほのぼの家族を目指しましょう。
天野 隆/税理士
税理士法人レガシィ