(※写真はイメージです/PIXTA)

2019年の「バレンタイン・ショック」以前、大量に販売されていた法人向け節税保険が、まもなく解約返戻金のピークを迎えます。しかしながら、新型コロナウイルスの蔓延など想定外の要因により経営状況が大きく変化したことで、予定していたタイミングで勇退ができず、解約返戻金を役員退職金として受け取るという計画が実行できなくなった経営者も多いでしょう。こうした状況で保険募集人が経営者相手に役立つアドバイスをするためには、どのような提案が必要になるのでしょうか。中小企業の経営支援をおこなうアイエスピー合同会社の豊田元幹代表が解説します。

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10年以上前に社長退任を予定し、解約返戻金・2億円の「法人向け節税保険」へ加入も…

先日、ある中小企業X社のA社長からご相談をいただきました。

 

飲食チェーンを展開するX社では、10年以上前に、いわゆる法人向け節税保険に加入していました。今年(2024年)、解約返戻金がピークになるタイミングで解約予定です。解約すれば、2億円の解約返戻金が支払われます。

 

保険に加入した当時は、今年70歳を迎えるA社長が勇退し、長男B氏が後を継いで事業承継をおこなうという計画を立てていました。そして、2億円の解約返戻金は、そのまま社長の役員退職金に充てるという節税対策の出口戦略です。

 

ところが、飲食業界に属するX社は、コロナ禍で経営環境の激変に見舞われました。ゼロゼロ融資などの支援策で命脈は保ったものの、経営経験の浅いB氏が舵取りをするには不安が大きく、しばらくはA社長が陣頭指揮を執り続けなければならない状況です。A社長の退任が不可能となったため、当然、役員退職金の支給もありません。

 

一方、法人保険の解約返戻金のピークは予定どおりで、ずらすことはできません。解約しなければ返戻金が急減してしまうので、予定どおり今年解約して2億円を受け取ります。

余裕資金でM&Aを検討

写真は代表の豊田元幹氏
写真は代表の豊田元幹氏

 

A社長は、その資金を用いて、M&Aでの他社買収を検討しているということでした。アフターコロナになり、飲食店舗への客足も戻り始めている今こそ、事業拡大のチャンスという判断です。そこで、よい売り案件があれば紹介してほしいと、私にご連絡をくださったのです。

 

その際に、A社長から「M&A減税やM&A補助金というものがあるらしいが、どんなものか教えてほしい」と尋ねられました。

 

社長のいう「M&A減税」とは、前回の記事(参照:“黒字経営”でも廃業の余儀なし…後継者不足の「中小企業・経営者」を救う、具体的な解決策【中小企業診断士が解説】)でご紹介した「経営資源集約化税制」のことです。

 

また、「M&A補助金」とは、「事業承継・引き継ぎ補助金(専門家活用事業)」のことで、M&Aに際してM&A仲介会社などの支援事業者を利用した場合、その費用の一部が補助される制度です。

 

A社長は一緒くたにして考えていらしたようですが、これらは別の制度であり別々に利用できるものです。

M&A減税、補助金を知らない保険募集人

私にご連絡をいただいたあと、A社長は、保険会社の担当募集人に解約返戻金の件についてご相談されました。その際に、M&A減税やM&A補助金などについて担当者に聞いたところ、担当者は制度についてまったく知らなかったということです。

 

後日の面談で、私がそれぞれの制度を説明すると、A社長は、そんないい制度があるなら、ぜひ利用したいとおっしゃっていました。

 

A社長との面談後、私は以前勤めていた保険会社の同僚など、10名ほどの保険募集人に、M&A減税や補助金について知っているかどうか尋ねてみたのですが、知っている募集人は1人もいませんでした。

 

これは、私にとってかなり意外なことでした。なぜなら、M&Aやその税制に関する知識や人脈のネットワークを持っていることは、保険営業においても、さまざまなチャンスと結びつくものだからです。

法人節税保険の解約返戻金に困る社長はこれからどんどん増えていく

2019年の「バレンタイン・ショック」以前、大量に販売されていた法人向け節税保険が、解約返戻金のピークを迎えるようになってきました。

 

しかし、A社長と同様、コロナ禍による大きな社会変容を経て、当初予定していた解約返戻金のピークにあわせた勇退ができなくなったという方もいます。実際は、そういう社長のほうが多いかもしれません。

 

今後、解約返戻金ピークを迎える法人向け節税保険が増えるのに比例して、A社長と同じような悩みを抱える社長も増えていくでしょう。

 

そうした経営者に、今後の企業成長に役立ち、かつ節税(課税の繰り延べ)にもなるような有効な使途をアドバイスできれば、保険募集人にとってその後の契約にもつながる大きな武器となるでしょう。

 

それにはいろいろな考え方がありますが、有利な税制や補助金なども活用しながら、M&Aでの買収によって成長分野への事業投資をおこなうことも、有力な考え方の1つでしょう。

 

もちろん、M&A買収はあくまで投資なので、その会社がおこなっているビジネスの市場に、投資による収益拡大機会があるのか、あるいは有望な投資先があるのか、という点がなによりも重要です。

 

それらの内容にまで保険募集人の方が踏み込んでサポートすることは難しいでしょう。しかし、考え方を社長にアドバイスすることはできるはずです。もし、具体的なサポートが必要になれば、私たちのようなM&A仲介が可能なコンサルタントなどに任せればいいのです。

M&Aの知識やネットワークは保険募集人の武器になる

写真は代表の豊田元幹氏
写真は代表の豊田元幹氏

 

M&Aで保険が求められるもう1つの役割は、M&Aの売り手が得た譲渡対価の使途としてです。日本の中小企業M&Aは、後継者がいない経営者が、事業承継のためにおこなうものです。

 

事業承継型M&Aでは、売り手となる経営者は高齢なので、M&Aの対価として得たお金の使途が問題になります。もし、貯金したままで相続が発生すれば、相続人は不必要に高額な相続税負担が生じます。現金のまま贈与するにしても同様です。

 

かといって、不用意に不動産投資などに資金を投じても、失敗のリスクがありますし、分割が難しいことから親族内での遺産分割争いにつながることも少なくありません。

 

そこで、課税メリットを得ながら任意の相続人(家族)に資産を残すために、被相続人(経営者)が契約者となり、相続人が受取人となる生命保険が活用されます。これは、いわゆる代襲分割に用いられることもあります。

 

こうした保険活用も意外と知られていないので、経営者から喜ばれる提案の1つです。

 

M&Aには、必ず買い手と売り手がいます。上述のように、M&Aの買い手にとっても、売り手にとっても、保険募集人が役立つアドバイスをできる場面はあります。そして、場合によっては、買い手または売り手の経営者から、M&Aの相手方となる売り手または買い手の経営者を紹介してもらえることもあるでしょう。

 

経営者の懐に飛び込んで、お金の悩みに対して本当に役立つアドバイスをできることが、結果を残せる保険募集人になるために重要であることはご承知のとおりです。

 

多くの保険募集人がM&A知識を持たない現状で、それを理解してアドバイスできたり、必要なときには具体的なサポートまで対応できるネットワークを持っていたりすれば、ライバルと大きく差をつけられることは間違いありません。

 

 

豊田 元幹

アイエスピー合同会社

 

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