すでに生活に欠かせない存在となったスマートフォン。現在は主にLTEなどで知られる4G(第4世代通信)と、最新の5Gで通信が行われています。総務省の発表によれば令和4年度末において5Gが利用できる全国の人口カバー率は96.6%に達しています。そんななか、通信・ビジネス業界ではすでに次の「6G」に関する研究・開発が進んでいます。本稿では「6G」の普及が私たちの生活にもたらす変化について、いくつかの実例を挙げて解説します。
実用化が目前に迫る「6G」…超低遅延・超高信頼の“次世代移動通信システム”で実現する未来とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

2030年頃の実用化を予定する次世代移動通信システム「6G」

「6G」は「5G」の次に来る次世代の移動通信システムで「Beyond 5G」や「5G evolution」とも呼ばれています。

 

2030年頃を目処に研究開発や規格の策定が行われることになっており、現時点では「6Gは確実にこうなる」ということは断言できません。ただ6Gに向けての研究・開発は、現在の5Gをさらに高速・大容量・低遅延(素早い反応)化しつつ、海や空を含めた地球上のどこでも通信でき、それどころか宇宙までカバーしようといった、新たなフェーズへの挑戦だといえそうです。

 

空・海・山・砂漠…「どこでも使える」を実現するHAPS技術

2020年、ソフトバンクの無人航空機が成層圏の飛行に成功し、いまも研究開発のために飛んでいます。太陽光エネルギーで飛び続けるグライダーのようなもので、スマホやモバイル端末と通信する基地局の機能を持っています。

 

この「高高度基盤ステーション」(High Altitude Platform Station:HAPS)は、商用化に向けた取り組みが行われています。

 

ソフトバンクの空飛ぶ通信基地局『Sunglider』(提供:ソフトバンク)
ソフトバンクの空飛ぶ通信基地局『Sunglider』(提供:ソフトバンク)

 

空飛ぶ基地局が実現すると、空・海・山・砂漠など、あらゆる場所でモバイル通信が使えるようになる可能性があります。地震・水害などで既存の基地局や通信機器が破損してモバイル通信が寸断された場合でも空からの通信が可能となるため、災害時に活躍すると期待されています。

 

「HAPS」については、NTTとドコモ、エアバス、スカパーJSATの4社も共同で早期実用化に向けた研究開発を進めています。人工衛星を使った通信も視野に入れており、次世代6Gでは地上と宇宙の間でのモバイル通信が実現するかもしれません。

 

タイムラグは5Gの10分の1…6Gが目指す技術の進化

6Gについての詳細はNTTドコモやKDDIなどがコンセプトイメージとしてホワイトペーパーとして公開しています。

 

たとえば、NTTドコモが公開している「6Gで目指す要求条件」によると、5Gと比較して高速通信では10倍(100GBps超)、低遅延(すぐに反応する速度:タイムラグ)は10分の1になります。平方kmあたりに接続できるデバイス数は1,000万台(5Gは約100万台)と大幅に増える予定です。

 

速度性能以外にも、高い信頼性や低消費電力などが掲げられています。

 

出典: NTTドコモ「6Gで目指す要求条件」
出典: NTTドコモ「6Gで目指す要求条件」