車に乗り込んで行き先を設定するだけで、自動的に目的地まで運んでくれる――そんな夢のようなシナリオは、長らく想像の中だけのものでしたが、この数十年で自動運転技術は大きな進化を遂げ、今や現実のものとなっています。そしてその流れの中で、2020年7月に羽田空港で実現されたのは、車ではなく「パーソナルモビリティ(一人用の乗り物)いす」の自動運転です。本稿では、簡単な操作だけで、目的地まで誰でも安全に移動することができる「WHILL(ウィル)自動運転モデル」について、WHILL広報の新免那月氏に話を伺い、その技術や広がる今後の可能性について解説していきます。
世界の空港で続々導入… WHILLの「自動運転パーソナルモビリティ」が叶える、誰でも自由に目的地へ (画像提供:WHILL株式会社)

未来を豊かにする「自動運転パーソナルモビリティ」のこれから

2020年に羽田空港第1ターミナルで本格導入以来、拡張を重ね現在は第1・第2両ターミナルに合計24台を設置するまでに拡大した「WHILL自動運転サービス」。その活躍は羽田空港だけではありません。

 

2022年10月には関西国際空港、2023年4月には成田国際空港でWHILL自動運転モデルを導入。国外ではカナダのウィニペグ空港で日々運用されています。空港以外にも慶應義塾大学病院などの病院でも、患者さんの移動をサポートしています。さまざまな場所の新しい移動手段として、足の不自由な方や長距離を歩くことに不安のある方など、幅広い年齢層に利用されるようになりました。

 

慶応義塾大学病院に導入されているWHILL(画像提供:WHILL株式会社)
慶応義塾大学病院に導入されているWHILL(画像提供:WHILL株式会社)

 

「自動運転技術」の安全対策と普及は、国を挙げての事業になりつつあります。

 

2023年4月の改正道交法で、自動配送ロボットが一部の公道で走行できるようになり、社会的にも自動運転による移動や配送の実装が進められています。

 

WHILL社は、国土交通省による電動車椅子活用実験やMaaS実験等に参加し、官民連携でのパーソナルモビリティ普及促進活動にもつとめています。2023年6月に行われた「G7三重・伊勢志摩交通大臣会合」では、WHILL社代表の杉江理氏が交通大臣および関係者向けに「WHILL自動運転モデル」やそのサービス内容を披露しました。

 

「パーソナルモビリティ」は、長距離の歩行に不安がある人はもちろん、少子高齢化が進む日本で介助者の負担軽減にも繋がると期待されています。

 

自動運転技術の進化に伴い、新たな法的枠組みが整備され、安全性の確保と普及促進が着々と進んでいます。これにより、将来的には自動運転技術が日常の一部となり、移動手段としての自由度が向上する展望も見えてきました。

 

高齢者や障がいの有無に限らず、「自動運転パーソナルモビリティ」での移動が当たり前になる時代が来るのかもしれません。

 

 

(情報・画像提供=WHILL株式会社)