⾻や⾎管、神経といった組織や臓器をバイオ3Dプリンターで作り、人体に移植する……今、再⽣医療に⼤きく貢献する「バイオ3Dプリンター」を活⽤した研究・開発が進んでいます。本格的な実⽤化はまだ先になりますが、国内の治験ではバイオ3Dプリンターで製作した指の神経の再⽣に、世界で初めて成功するというビッグニュースも届いています。そこで、最新の研究や事例を基に、期待が⾼まるバイオ3Dプリンターの活⽤について見てみましょう。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
20年後には「臓器移植待ち」がなくなる? 実⽤化へ向かう「バイオ3Dプリンター」による再⽣医療 (※写真はイメージです/PIXTA)

無限に可能性が広がるバイオ3Dプリンターがもたらす未来

 

バイオ3Dプリンターでは、皮膚や骨、神経、臓器など、体のあらゆるパーツを患者一人ひとりに合わせて作ることが可能になります。そのため、臓器移植もドナーから提供される臓器の代わりに自分の細胞から作った人工臓器で行えるようになり、ドナー不足の解消や、拒絶反応のリスクも少なくなると期待されています。

 

また、日本ではさまざまな細胞に分化することが可能なiPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究も進んでいます。その中で、バイオ3Dプリンターと組み合わせた研究も進められており、再生医療の可能性が広がるかもしれません。

 

さらに期待されるのが「創薬への活用」です。現在、動物実験の代わりにバイオ3Dプリンターで作った組織や臓器を使い、薬剤の毒性や副作用、効果などをテストする試みが進められています。実際にアメリカでは、3Dプリンターで再現した臓器で新型コロナウイルスの薬剤テストが行われたといいます。

 

バイオ3Dプリンターで作った組織や臓器を使うことで、実験動物という倫理的な問題がなくなるほか、人の組織や臓器とほぼ同じもので行えるためデータの信頼性が高く、人による治験に移った後の開発中止を避けやすくなります。

 

バイオ3Dプリンターは、最近10年間で急成長した新技術です。これからさらに研究が進み、普及をしていく中で、新しい問題も出てくるでしょう。それらも解決した先には、病気やけがをしたら自分の体の一部でさえも家電や車のように新しいものに交換していく……そのような時代が来るのかもしれません。

 


関根 昭彦

医療ライター 大手医薬品メーカーでの医療機器エンジニアや医薬品MRなどを経て、フリーランスに。得意分野は医療関係全般。