ビジネス・ブレークスルー大学(下記、BBT大学)は、日本初の100%オンラインによる学習で卒業できる大学です。2005年の創立当初は、大学院で経営学を修了した者に与えられる学位・経営管理修士(MBA)をオンラインで取得できる、経営系専門職大学院として開学しました。その後、2010年に経営学部が設置され、学士課程が整えられました。現在、学生にとってオンライン学習は身近な存在になりましたが、創立時は時代背景・教育現場の舵取りが大きく異なり、向かい風のなかスタートしました。本記事では、BBT大学の歩みを振り返り、さらにオンライン学習の現在について解説します。
日本初の「100%オンラインで卒業できる大学」が「教務AI」を独自開発!テクノロジーの力でボーダーレスに学べる世界へ (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

オンライン授業のパイオニアである、BBT大学の現在

 

コロナ禍を経た現在では「インターネットを活用し、学校のカリキュラムを自宅で学ぶ」ということが一般化していますが、2010年にBBT大学が経営学部の学士過程をスタートした当初は、オンライン授業への好意的な意見は極めて限定的でした。


教育業界では「学校とは、通学して学ぶもの」「学友との交流こそが重要であるにもかかわらず、何故わざわざインターネットを介して勉強する場を作らないといけないのか?」など、否定的な意見が多くありました。


しかし、翌年2011年に起きた東日本大震災、2020年から拡大した新型コロナウイルスによる活動自粛期間を経て、潮目が大きく変わることとなります。それまで当たり前だった日常が送れなくなり「インターネットを使った教育は必要不可欠ではないか?」と、世の中がテクノロジーの効能を再評価し始めたのです。

実際、コロナ禍ではオンライン教育がなければ、小学校から高校までの学校教育においても、乗り切ることができなかったのではないでしょうか。著者には中学生と高校生の子どもがいますが、実際に学校側がMicrosoftのTeamsを使用してリモート学習環境を用意し、授業のライブ配信を行っていました。

このようにして、「Facetofaceの環境でなければ」と頑なだった教育現場が、新型コロナ感染症の出現によって大きく変わらなければいけなかったのが、ここ数年の動きだったと言えます。

リモート学習をフォローするITシステム

もちろん、リモート学習が教育面において完璧な方法であるという訳ではありません。しかし、リモート学習だからこそのメリットもあります。

学ぶ場所を問わないため海外から参加することも可能で、日本語を理解できない他言語使用者はAIによる翻訳機能で内容を把握することができます。さまざまな事情で学校まで通うのが難しい人や、社会人で通学時間を捻出できない人たちに重宝されます。

また、オンライン型スクールならではのデメリットについても、カリキュラムの工夫やITシステム構築によってフォローができる点があります。

たとえば、BBT大学には10年以上に渡るオンライン学習者の膨大なデータの蓄積があり、それらを基にさまざまな改善策をかけ合わせて、よりよい教育環境の構築が日々進められています。実際に現場で活用されているITシステムを紹介します。

 

教育のDX化を推進するため独自のAI「BioLa」を開発!

 

BBT大学では2021年から、教務AI「BioLa」の運用を始めました。

「BioLa」は、これまで大学が10年以上に渡って蓄積した学生のデータを機械学習させたオリジナルAIです。これまで、学習進捗の良し悪しを人間が判断するには多くのデータを参照して総合的に見ることが多く人が俯瞰的にそれらのデータを見るのは時間がかかっていました。このデータを見て進捗の良し悪しを判断する作業を効率化するためにBioLaを開発しました。

オンラインのみの教育現場では、大量の学習履歴データが発生します。なぜなら、対面授業であれば出席頻度や学生のモチベーション、授業の理解度などを教師が直接確認しますが、オンライン教育ではそれらが記録データに置き換わるためです。

具体的に、学生が閲覧したページの履歴やクリックした場所、受講の有無や課題の提出履歴、最終アクセス日など多岐に渡ります。学生1人1人の状況を示すデータは膨大であるうえ、別々の場所に保存されているため、教員やスタッフが分析・処理しきれないところに問題がありました。

こうした問題にも教務AIは有効です。過去の学生たちの学習データと照らし合わせ、理解するのが難しい可能性が高い教科や単元、受講しなくなったタイミングなどを見つけ出し、AIがアラートを出します。

 

画像:教務AI「BioLa」 

 

現在のところ、教務AIがアラートを出した学生に対して、いつどのようにアクションを起こすかは各教員の判断に委ねられています。しかし、教務AIのアラートを生成AIが解析し、どのようなサポートが適切か提案するまでを行う機能が、今後は搭載される予定です。