VCと株式型クラウドファンディングの連携事例にも注目
また、海外ではスタートアップ企業が資金調達する際に、ベンチャーキャピタル(以下、VC)と併せて株式型CFを利用する事例が目立ちます。
例えば、米国のスタートアップ企業向け銀行を運営するMercury Technologiesは、2021年に約156億円の調達を実施しました。この調達額には、大手VCのAndreessen Horowitzをはじめとする有名VCによる出資金額のほか、株式型CFを通じた個人からの約6.5億円が含まれています。
一般的に事業フェーズが進んだスタートアップ企業ほど、1回につき調達する金額が大きくなる傾向にあります。
VCと同時に株式型CFを行うことで、企業側は自社サービスの潜在ユーザー層などを巻き込むことができ、個人投資家側はVCからまとまった金額が投入されるようなスタートアップ企業に関わる機会を得られます。
VCと株式型CFの併用が進むことで、個人投資家にとって自分が応援したいと思える企業に出会える機会を増やすことに繋がっています。
株主のコミュニティが若い企業の成長を支える
株式型CFならではの魅力は、投資先の企業を「応援したい」気持ちを大事にする個人投資家が多いことです。その特徴から、海外ではユーザーやファンを株主として迎え、コミュニティを形成するという目的で用いられることが増えています。
先述した通り、米国のプラットフォームWefunderは株式型CFを「コミュニティラウンド」と提唱しています。このことから、スタートアップ企業が資金調達をするのに、個人投資家のコミュニティが非常に重要な役割を担っていることが分かります。
例えば、大手VCの資金調達と併せて、株式型CFによる調達を実施したMercury Technologies。創業者であるImmad Akhund氏は、株式型CFを活用した理由を、「創業時から支えてくれたユーザーを巻き込み、還元する仕組みを作るためだ」と述べています。
実際に同社は2,453名の個人投資家を株主として迎えましたが、その約75%がユーザーとなりました。
英国クラフトビールブランドのBrewdogは、2010年に最初の株式型CFによる調達を実施して以降、「パンク株」と称して複数回の調達を実施しました。世界20万人以上の株主数を誇ります。同社は、「パンクの精神」を一つのコンセプトとし、ファンや株主をパンクスという愛称で呼んでいます。
また、新商品の開発やバーの新規出店などに株主の意見を反映させるなど、株主を巻き込んだ事業開発をしている点もBrewdogの特徴です。