スタートアップ企業育成には、実は個人でも各地のスタートアップ企業を応援できる仕組みがあります。起業されて間もないスタートアップ企業に出資することを「エンジェル投資」と呼びますが、この「エンジェル投資」をフィンテックの力で広く利用しやすくした「株式投資型クラウドファンディング」という仕組みについてみていきましょう。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
クラウドファンディングでスタートアップ企業を応援!「エンジェル投資」の新しい形とは (※写真はイメージです/PIXTA)

国内の株式型CF業界にとって今後注目の議論は、スタートアップ企業が一度に調達できる金額の上限規制についてです。

 

株式型CFでは、投資先のスタートアップ企業が破綻した場合などに、投資家の数や損失額を限定するといった観点から、1年間に調達可能な金額を1億円未満とすることが、関連法令で定められています。

 

政府の「スタートアップ企業育成5ヵ年計画」でもこの1億円規制などについて「必要な見直しを図る」と明記されていますが、上限額がどの程度拡大されるかや、拡大できる場合の条件などは、関係省庁内の今後の議論にゆだねられそうです。

 

海外における株式投資型CFの調達上限額は、米国で6.5億円程度、英国で11億円程度(1ドル=130円で換算)。その金額の規模から、海外では、より事業のフェーズが進んだスタートアップ企業も株式型CFを活用する例が増えてきています。

 

日本でも1億円以上の調達が見込めるようになれば、より成熟したスタートアップ企業が株式型CFを利用する可能性が高まります。

 

個人投資家側も、すでに身近なサービスを提供している、名前を聞いたことがあるといったスタートアップ企業に投資できる機会が増えそうです。

 

日本は海外に比べ、個人の金融資産に占める現預金の比率が高く、政府が「貯蓄から投資へ」という文脈でさまざまな施策を検討しています。

 

こうしたなか、株式型CFにおける上限額の規制を緩和し、より多くの資金を唯一無二の技術やこれまでにない新しいアイディアをもつ起業家に提供することは、未来の経済・社会にとって非常に意義のあることではないでしょうか。

 

 

イークラウド株式会社

株式投資型クラウドファンディングのプラットフォーム「イークラウド」を運営。これまで限定的だったベンチャー投資に関する情報と機会を一般投資家へ提供し、起業家へは銀行・VCなどとは異なる新たな資金調達の手段を提供する。イークラウドを通じた平均調達額、調達成功率はともに業界No.1。(2023年1月時点、イークラウド調べ。)
https://ecrowd.co.jp/

 

波多江 直彦

2006年にサイバーエージェントへ入社し、広告代理部門、スマホメディア、オークション事業立ち上げ、子会社役員等を経て、サイバーエージェント・ベンチャーズで投資事業に従事。その後XTech Venturesにてパートナーとして、VR・SaaS・モビリティ・HRTech・シェアリングエコノミー・サブスクリプションサービスなどへの投資実行を担当。ベンチャー投資の世界をプロだけでなく、個人投資家にも開かれたものにすべく、2018年7月にイークラウド株式会社を創業。慶應義塾大学法学部卒。