物件そのものより“ストーリー”を重視
取材時、テーブルに置かれていたのはオオクスライフアシストが扱う別荘のPRアイテムたち。一見、ファッションやライフスタイルの雑誌と見まがうような、スタイリッシュなものばかり。いったいどんなこだわりがあるのだろうか。
「一般的な別荘のカタログは、写真やテキストで“希少性、スペック、環境のよさ”などを羅列して、いかに良い物件であるかということに終始しています。一方、私たちの提案資料は、そのような観点では制作していません」
同社のWEBサイトを訪れると物件ごとにセレクトされたミュージックを背景に、物件というよりも静謐な街並みやそこに暮らす人々、自然のなかを走るクルマなどが目に入る。
「私たちが提示するのは単なる物件ではなく、物件を所有する主人公(顧客)のストーリーなのです。そして、私たちの価値観を理解・共感してくれているのが、現在のクライアントの方々です。自分が欲しい物件をただ探すだけの業者や、物件のセールスポイントを一方的にアピールしてくる業者たちに辟易としている彼らが私たちにある種の潤いを感じコンタクトしてきてくれます。
そのようなクライアントに対して私たちは、彼らが『主人公』になったときに、その空間にいられることでどんなライフスタイルを送ることができるのか……具体的なイメージを思い描いてもらうために、ストーリーを重視しています。たとえば海の近くにある別荘であれば、ハワイのプロサーファーのジョブスタイルをリンクさせている。物件を売っているというよりは、“情景”を売っているのです」
こうしたこだわりによって、パンフレットからWEBサイトにいたるまで、すべてを自分たちで制作しているという。
「これまでブレずに培ってきたこの『ストーリーを売る』という価値観と方針は、他の不動産会社にはマネできないことだと思います。私たちは良くも悪くも、1枚の写真でさえ徹底的にこだわる。自分が、心からこれでいい、と納得できるクオリティになっていなければ、たとえWEBサイト用の写真1枚ですらみなさまにお見せすることはありません」
別荘とは…ありのままの感覚を呼び覚ます「装置」
別荘を購入する目的は人それぞれだ。投資のため、余生を豊かに暮らすため、アクセサリーのように自分をより煌びやかに魅せたい……。橋本氏自身は、「別荘」をどう捉えているのだろうか?
「別荘は、人と自然を結びつけ、その人の本能的な感受性を呼び覚ます。そしてそれこそが『別荘の本質』だと考えています。たとえば目の前に広がる海の姿を素直に美しいと感じ、自然と繋がる。その土地の食べ物をじっくり味わい、心から美味しいと思える……別荘は、そういった感覚を思い出す“装置”なんです。
あるとき、ビジネスに思い切り熱中している“ビジネス中毒者”のクライアントが『別荘は自分にとって生命維持装置のようなものだ』と語ってくれたことがありました。
このような方々にとっては、利用しなくてはいわば“命が危ない”といったところで、別荘はビジネスと切り離して生命をつないでくれる重要なものなのだといいます。また、ビジネスの世界から隠居するタイミングで別荘を検討されているクライアントにとっては、その後生で物事の本質を考えていくことができる場所となります。
人によっては『ただお金を使いたい』とか『周りに自慢したい』とか、そういった目的で別荘をお求めになる方もいますが、本質はそこにはないということです」
オオクスライフアシストが求める別荘の「美しさ」
「別荘=美しい」というイメージを持っている人は多いが、同社が求める「美しさ」は“見た目”や“豪華さ”ということではないようだ。
「さまざまな別荘を見てきましたが、私は自然のなかにある建築物が好きです。普遍的な美しさというのがありますよね。ビジュアルで美しいというよりも、その本質を知ることで美しさが見えてきます。たとえばそこにあるその車のようにね」
橋本氏が指さしたのはシボレー コルベットの2型。人の生命を脅かすほどの獰猛なエンジンを積むその「マッスルカー」には、そのストーリーを知っているものにだけわかる美しさがある。
「『見た目がかっこいい別荘です、いい場所に建っています、お金をたくさん使って買いました』……こういった人を見ていると、せっかく別荘を所有していても、本当はくつろげていないのではないかと心配になります。物件が本質を突いた“機能”を備え、使う側もそれが真から理解できてこそ、はじめて別荘が本当の美しさを発揮するのではないかと」
そんな“本質を突いた”美しさが、同社のWEBサイトに垣間見える。たとえば、キッチンで撮った「脚の写真」だ。
「建築専門のカメラマンが撮った写真はたしかに美しい。ですが、私たちが映し出したいのは“機能美”であり、“全体美”です。この写真の別荘はオーシャンフロントで、ロケーションがとてもいい。この写真のイメージは、キッチンから奥さんか誰か、浜辺のテラスにいる家族を呼んでいる光景です。『ご飯できたよー』と言っているかもしれません。このように、私たちは別荘という空間を売っているのではなく、この情景を売っているわけです。
私たちはそこに価値があるということがわかっていて、それを表現できる力を持っているから、他社が売るよりも高く売れます。理由や理屈の無い納得感を得て買ってもらっているという実感があるのです」
磨きをかけた審美眼を通して販売されるその別荘たちには、人々の豊かな暮らしが見えてくる。こうした魅力に気づいたクライアントは、橋本氏を一介の不動産業者ではなく、まるでひとりの友人のように接する。事実、橋本氏はクライアントと釣りやサーフィンに興じたりするのだそうだ。
このように、常識を打ち破り、こだわり抜いた独自の手法で別荘の「本当の価値」を発信し続けるオオクスライフアシスト。クライアントの納得度が高いのも頷ける。