躍動する国、エジプト…首都移転を控える「カイロ」のいま

ピラミッド、アブ・シンベル神殿、ナイル川……教科書で触れる古代の象徴「エジプト」。これほどまでに有名な国でありながら、日本人にはその実態が正確に伝わっていない。エジプトは、この2000年代において、アフリカ大陸で急成長を続けている要注目国である。しかも首都移転というビッグプロジェクトを控え、世界の投資家から熱い視線が送られている。大きく飛躍しようとしているエジプト。活気に満ちたカイロの「いま」を緊急レポートする。

安全な混沌…観光都市としてだけではない、カイロ〜ギザの魅力

機上からみたエジプトの姿は、想像よりも緑が多かった。日本人の勝手なイメージで、エジプトといえばピラミッド。ピラミッドの周りは砂漠、つまり全土がサハラ砂漠……そんな思い込みは間違っていたことに気がつく。

 

確かにギザにあるピラミッドは市街地と隣接しているが、なかなか広大な砂漠の中にある。ただ、ナイル川沿いは驚くほどに緑豊かだ。カイロの衛星都市であるギザは、人口363万人。東京が1,300万人だから、なかなか大きな都市である。

 

では、本題のカイロはというと、ちょうど1,000万人ほど。なるほど東京と同じようなものかと思い訪れてみると、とんでもないことに気づかされる。カイロ市の道路は混雑を極め、日々混沌としており、カイロ市内の古いアパートにもぎっしり人が住み、高層マンションには所狭しとエアコンの室外機が掲げられる。どこかインドの風景に似ているのかもしれない。

 

ナイル川に面するカイロの街/建物が所狭しと並ぶ

 

とにかく街を歩いても、熱気がものすごい。相当に厳格なイスラム教徒が多いおかげか、治安そのものはそう悪く感じない。アラブ特有の、人懐っこさが日本人には心地良いと感じるはずだ。料理はトルコに似ている。ソラマメ、レンズマメなどのメゼ(ディップ)や、ナス、それにエジプト名物のモロヘイヤが美味。白米は日本米によく似ていて、日本人にも馴染みやすい食文化だ。

 

首都カイロ、はカイロだけでなくニューカイロなどの大カイロ圏で考える必要がある。前述した1,000万人で考えてはダメだ。おおよそ、この大カイロ圏には2,000万人が溢れかえり、エジプト全体では2020年に人口1億人を突破した。2010年時点で8,044万人だったというから、とてつもない増加率である。

 

観光客が必ず立ち寄るという、カイロのバザール

 

2050年には1億5,000万人に達し、世界9位の規模になることが見込まれている。2010年代のアラブの春以降、シーシー大統領の下でエジプトは急激な成長を遂げてきた。それに寄り添うように、人口の爆発的な増加が伴っている。

 

そんな過密状態の観光地だから、ギザのピラミッドを見るには大変な思いをすることになる。限定チケットは、朝のうちにソールドアウト。計画なしには、その近くまで行くことも許されない。3つのピラミッドは最大のもので高さ138.5m。いまだにその建設方法を含めて謎が多いとされるが、ふもとに立つとその荘厳さにおののくばかりだ。ずらりとならぶ露天商と、観光用ラクダも実にたくましい。

 

スフィンクスとピラミッド

 

ギザからカイロへ戻り立ち寄ったムハンマド=アリーモスクでは、その壮麗なイスラム建築にも驚かされたが、おおよそ20kmほどもあるギザの大ピラミッドが、ここカイロからもかなり大きく見えたことに何よりも驚いた。なるほど、カイロ市民にとって、あれは日本人にとって富士山のようなものなのだろう。ふと高いところに上れば、日本の各地に拡がる「富士見町」よろしく、ピラミッドを眺めることができる。これは、エジプトツーリズムとしての醍醐味かもしれない。

 

カイロにあるムハンマド・アリ・モスク。巨大なドームとミナレットが荘厳な雰囲気
カイロにあるムハンマド・アリ・モスク。巨大なドームとミナレットが荘厳な雰囲気

政府の「首都移転計画」、そして古都としての新たなカイロ

この溢れかえるような過密状態の大カイロ圏は、もちろん観光ではなく国策として考えれば歓迎すべきものではない。道路の渋滞は慢性化していて、住環境も悪化の一途を辿る。都市機能の麻痺を迎える前に、シーシー大統領が2015年に首都移転を宣言した。

 

その都市計画に用意された土地は、約700平方キロメートル。東京23区が627平方キロメートルだから、23区規模の都市を新たに造り出そうというとてつもない規模感である。カイロからは、おおよそ70km。4つのフェーズに分けられた計画のうち、いまはフェーズ1が進んでおり、行政地区はほとんど完成に近いところまで進んでいる。

 

ACUD(Administrative Capital For Urban Development)のKhaled El-Husseiny Soliman氏は、この新都市について、こう切り出してくれた。

 

ACUD(Administrative Capital For Urban Development)
ACUD(Administrative Capital For Urban Development)Khaled El-Husseiny Soliman氏

「現在はとても小さいものの、一番重要なフェーズに取り組んでいます。行政地区にはすべての省を集約し、加えて大統領のビルはガバメント・デザートと呼ばれます。レジデンス、それにダウンタウンなどもフェーズ1に含まれています。現在第1フェーズの70%が完了しており、3~4年後には新しい首都が見られるでしょう。

 

第2フェーズは6〜7年後、新首都のすべてができあがるのは、2030年と考えています。新首都向けの空港建設もプロジェクトに入っていますが、こちらの計画はレジデンスなどの進捗に左右されますね。

 

第1フェーズのレイアウトとしては、商業ビルや行政地区、財政地区や『アーティカルチャー』と呼ぶエリアも進めています。アフリカ大陸で一番大きなオペラハウスや博物館など、現代の文化を集めた街です。

 

CBD(Central Bussiness District:中央ビジネス地区)は0.8平方キロメートルの規模となり120〜400mのタワーが20も建ち並びます。一番高いタワーは約400m、アフリカ大陸の中でも高いシンボルになりますよ」

 

その名も、アイコニックタワーは南アフリカのザ・レオナルドを超えるとのこと。また、アイコニックタワーのあとには、ドバイのブルジュ・ハリファをさらに越える1,001mのオベリスクタワーも計画されており、20世紀の経済を象徴してきたニューヨークにおけるエンパイア・ステートビルのように、21世紀最新スマートシティの象徴がそびえたつのだ。

 

さらには、東京で言う23区を横に突っ切るような巨大な公園も計画されているという。

 

「サスティナブルな街としては、グリーンエリアが必要です。様々な場所にパークを設けますが、最も大きいものがナイル川を模したグリーン・リバーです。この公園は、東西へ川のように12km伸び、南北で最大1km幅。必要な水は、3,600立方メートルにも及びます」

 

新首都(New capital)マップ
新首都(New capital)マップ

 

ニューヨークのセントラルパークのような帯状の公園だが、その規模がとてつもない。砂漠の荒野に、圧倒的な規模のグリーンエリアを作ろうとしている。

 

「この新首都に最初に入ってくるだろう入居者は200万人ほど。エジプト市民よりは富裕層、または投資家だと考えています。しかし、仕事をする人などすべての人々に住宅が行き渡らないと意味がありません。そのため、大きなエリアだけでなく、手頃な住居なども用意しています。最終的には600万人ほどのカイロ住民が新首都へやってきて、古都カイロもよりも大きな都市になると考えています」

 

人口が最適化されることにより、カイロのハン・ハリーリなどの旧市街地区は、ブラッシュアップされ、カイロ住民の暮らしも底上げされていくことだろう。

 

いまから100年ほど前の1920年ごろ、オールドカイロは世界で一番綺麗な街だったという。ハン・ハリーリ周辺は特に美しかった。いまのように渋滞もなく、人々は不安やストレスも感じることはなかった。

 

新首都を中心とした、新たな大カイロ圏は、周囲を巻き込んで大きなうねりとしてアフリカ北部の中心地を担っていくに違いない。

 

オールドカイロからギザのピラミッドを臨む
オールドカイロからギザのピラミッドを臨む

 

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著者紹介

連載首都移転で沸く「エジプト」緊急レポート

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