企業オーナーや個人投資家の「事業投資」に対する機運が高まる中で注目を集めているのが「コインランドリー」の経営だ。ここでは、「事業」としてどう収益性を高めるのか、この点で特筆すべき取り組みを多数行っている株式会社ジーアイビー代表取締役の鈴木衛氏に、コインランドリー事業投資の最新事情を伺った。まずは「コインランドリー事業」が節税策として注目される理由を解説する。

圧倒的な「伸びしろ」が潜在するコインランドリー市場

良い投資先はないか――。企業オーナーや投資家の方々であれば、常にこの思いを抱いているはずです。

 

私も、税務・会計・コンサルティングの世界で20年以上働き、多くの企業オーナーと関わる中で、中小企業の事業ポートフォリオの一部となり得る、あるいはオーナー社長個人の資産形成や節税策、事業承継対策などとして利用できるような、そんなビジネスがないかと模索し続けてきました。

 

そして、そのニーズにピッタリ合っているのが「コインランドリー事業」だと今は確信しています。

 

 

かつてのコインランドリーは、近所に住む学生などの若者を対象にした、狭くて暗いような雰囲気の店舗ばかりでした。しかし近年では、駐車場を備え、車で通う主婦やファミリーを主要顧客にした比較的大型の店舗が主流になるなど、大きな変化を遂げています。しかし、生活に密着したビジネスであるという点は変わりません。ということは、一度その便利さを知った顧客に対して、継続的な利用が見込めるビジネスだということです。

 

近年、店舗スタイルや利用形態の変化によって利用者は急増しているものの、日本国内でのコインランドリー利用率はいまだ5~6%程度にとどまっています。つまり、新しい顧客層を開拓できていないということです。

 

株式会社ジーアイビー
代表取締役 鈴木衛 氏
株式会社ジーアイビー
代表取締役 鈴木衛 氏

一方、欧米諸国では、車で通うスタイルのコインランドリーの利用率は20%を超えているともいわれています。日本国内のコインランドリービジネスは、顧客開拓ができれば、市場全体としては大きな成長余地があると考えられます。

 

さらに、コインランドリー市場の「潜在的な伸びしろ」を、顕在化させるであろう成長要因として、次の3点が考えられます。

 

1点目は、今後の日本全体での人口減少=労働力不足の深刻化を背景とし、女性の就労率はまだまだ上がるという点です。これはすなわち「共働き」の世帯が増えることを意味します。すると、大きな流れとして家事のアウトソーシング化が進みます。コインランドリービジネスのポジションは大きく見れば、この家事アウトソーシング化の一部にあり、今後も成長が見込まれます。

 

2点目に、花粉症、アトピー性皮膚炎などアレルギー性疾患患者の増加があります。平成23年に厚生労働省が発表した「リウマチ・アレルギー対策委員会報告書」によると、全人口の約2人に1人が、何らかのアレルギー疾患に罹患しているとのことです。アレルギー性疾患の原因には、ハウスダスト、布団に生息するチリダニがあります。しかし、その対策として有効な、布団を丸洗いし、ダニを死滅させるほどの高温になる業務用乾燥機を使用する方法は、普及しているとはいえません。

 

3点目は、近年の異常気象、ゲリラ豪雨の多発、またPM2.5の飛来、さらには景観に関する規制などにより、従来のような「外干し」がしにくい環境が増えていることです。実際、現在のコインランドリーの利用目的は「洗濯」よりも、「乾燥」が主流なのです。これも、コインランドリービジネスを後押しする大きな要因です。

 

ペットボトルでの水・お茶の販売に踏み切ったコンビニ業界と同様に、コインランドリーの業界にも「供給」が「需要」をつくるタイミングが来ているといえます。

これまで「マーケティング」が存在しない業界だった!?

以上のように、コインランドリー事業には、市場全体として大きな成長の可能性があります。しかし、いくら成長余地があっても、すでに強力な事業者が存在していて新規開拓の余地がないなら、そこに参入する「旨み」はありません。

 

私がコインランドリー事業への参入を検討した際、当然ながら業界について詳細な調査を徹底的に行いました。すると、当時この業界には「マーケティング」といった考え方自体が、ほとんど存在していない状況だということがわかったのです。その根底には、「100円玉を集める小銭ビジネス」という考えがあり、費用を掛けてマーケティングや広告をするよりも、「目立つ店を作って、顧客が気づいてくれるのをじっと待つのが一番」というのが常識だったからです。業界全体的に見れば、これは今もあまり変わっていないように思います。

 

 

市場全体としては、大きな潜在的成長力がありながら、旧態依然とした非効率なやり方をだれも変えていないのです。これは、コインランドリービジネスのもつポテンシャルがまったく活かされていないということです。これは大変有望な、まさに「ブルーオーシャン」ではないでしょうか。

 

取材・文/椎原芳貴 撮影(人物)/佐山順丸
※本記事は、2018年4月5日に収録したインタビューを再構成したものです。

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