インターネットで複数の投資家から出資を募り、企業や事業への投融資で得た収益を還元する「投資型クラウドファンディング」。預貯金よりも利回りが高く、株式よりも手堅い、とされる金融商品であり、投資家からの注目を集めている。そんななか、保証会社による債務保証によって元本割れのリスクを大きく低減させた、驚きの「クラウドファンディング商品」を発売(第1号案件は募集終了)したのが、SAMURAI証券株式会社である。本連載では、同社・代表取締役社長の澤田聖陽氏と、取締役の久保広晃氏に、その最新事情について伺った。注目を集めている第2号案件についても言及する。

クラウドファンディングの「9割以上」を占める投資型

クラウドファンディングとは、ひと言でいえば「インターネットを用いて、不特定多数の一般個人から少額ずつ資金を集める資金調達手段」のこと。まとまった資金で商品やサービスを共同購入したり、ボランティア活動や地域貢献のためにお金を寄付したり、といった目的で設定されるファンドが増えている。こうしたクラウドファンディングのことを「寄付型」「購入型」などと呼ぶ。金銭的な見返り(投資リターン)を求めるものではないので、「非投資型クラウドファンディング」と総称されることもある。

 

これに対し、クラウドファンディングには、出資者(以下、投資家)に金銭的リターンを還元することを目的として設立される「投資型クラウドファンディング」と呼ばれるものがある。集めたお金を企業や事業のために貸したり、投資をしたりすることで、利回りや配当金を得る仕組みだ。

 

つまり、「投資型クラウドファンディング」は、預貯金や株式、投資信託などと同じ金融商品の一種であり、これらの伝統的な金融商品に代わるオルタナティブ金融商品として、富裕層を中心に人気が高まっている。

 

「矢野経済研究所の調べによると、2017年度の国内のクラウドファンディング市場規模は約1,700億円ですが、そのうちの9割以上は『投資型クラウドファンディング』です。一般的には、社会貢献や趣味のためのお金集めというイメージが強いようですが、じつは投資目的で利用されるケースが圧倒的なのです」と語るのは、投資型クラウドファンディングを組成する、SAMURAI証券株式会社の澤田聖陽代表取締役社長である。

 

「投資型クラウドファンディング」にも、いくつかの種類がある。大きく分けると「貸付型」「ファンド型」「株式型」の3つだ。

 

「貸付型」とは、文字どおり投資家から募ったお金を法人や個人に貸し付け、その金利を出資者が出資額に応じて受け取るもので、「ソーシャルレンディング」とも呼ばれる。

 

「ファンド型」は、企業による商品開発やサービス展開など、特定の事業に対して資金を投資するためのクラウドファンディングだ。出資者には、プロジェクトの成功によって得られた資金が出資額に応じて分配される。

 

また「株式型」とは、未上場の中小企業やベンチャー企業に投資し、これらの企業が株式上場したり、ほかの企業に買収されたりしたとき、株式売却等によって得られた収益を出資者に分配する仕組みである。

価格変動リスクを抑えつつ年3~10%の利回りを目指す

このように、さまざまな種類の投資型クラウドファンディングが登場しているのは、「伝統的な金融商品に代わる、新たな投資手段としての認知が少しずつ広がってきたからではないでしょうか」と澤田氏は語る。

 

とくに人気が高いのは、SAMURAI証券も手掛ける「貸付型クラウドファンディング」だ。先ほどの矢野経済研究所の調査によると、金額ベースの市場規模では「貸付型」が「投資型クラウドファンディング」のじつに96%以上を占めている(2017年度)。

 

では、「貸付型クラウドファンディング」には、どのようなメリットがあるのだろうか。

 

「株式や債券といった伝統的な金融商品との大きな違いは、価格変動リスクを抑えられることです」と説明するのは、SAMURAI証券の親会社で、投資銀行業務などを展開するJASDAQグロース上場企業、SAMURAI & J PARTNERS株式会社の久保広晃取締役・事業本部長(SAMURAI証券・取締役)である。

 

「たとえば、SAMURAI証券が組成する貸付型クラウドファンディングは、個人および法人による不動産取得や、事業のために貸し付けるお金を集める仕組みですが、株式市場等に直結しているものではないので、価格変動によって元本が大きく目減りするリスクは小さいといえます。もちろん、担保となる不動産の価値が下がったり、融資先がデフォルト(債務不履行)に陥って元本が回収できなくなったりする可能性は皆無ではありませんが、厳格な与信審査によってリスクを抑えることができます」と久保氏は説明する。

 

価格変動リスクを抑えていることに加え、預貯金などと比べて高い利回りが得られるのも「貸付型クラウドファンディング」の魅力である。日銀のマイナス金利政策によって、銀行預金の金利は定期でも年0.01%と空前の低水準だ。これに対し、SAMURAI証券の「貸付型クラウドファンディング」の利回りは年3~10%と、かなりの高水準である(商品によって異なる)。

 

澤田氏は、「ローリスク・ローリターンから、クラウドファンディングだからこそ実現できるミドルリスク・ミドルリターンまで、幅広い商品を用意していますが、たとえローリターンでも、預貯金を大きく上回る利回り水準を設定しています。可能な限り元本保全に近く、相対的に高いリターンが得られるように設計しています。『人生100年時代』に備えて、着実な資産形成をお手伝いできる商品づくりを目指しているのです」と説明する。

 

そこで2019年5月、SAMURAI証券は、これまでにない「貸付型クラウドファンディング」商品である「SAF日本保証不動産ローンファンド1号」を販売した。詳細は本連載最終回(6月21日公開)で紹介するが、金融機関向けの保証事業などを展開する日本保証が貸付先の債務を保証するという、いままでにないスキームを採用している。日本保証が金融機関のローンの債務を保証していることから、投資家にとって安心のできる商品だ。

 

「SAF日本保証不動産ローンファンド1号」は、募集開始からわずか40分ほどで販売上限に達する好評ぶりであったため、現在第2弾を準備中である。詳細は、近日中に発表されるとのことだが、SAMURAI証券の「貸付型クラウドファンディング」を購入するには、同社が運営するクラウドファンディングサイト「SAMURAI」の会員であることが必要だ。会員登録には1週間程度の時間を要するので、事前に登録を済ませておけば、第2弾の保証案件が出た際もスムーズにアクセスすることができるだろう。

 

↑会員登録はこちら↑

取材・文/渡辺賢一
※本インタビューは、2019年5月24日に収録したものです。