モンゴルのウランバートル中心部にあるチンギス・ハーン広場と政府宮殿 (国会議事堂)

富裕層に人気の高い海外不動産投資だが、最近注目を集めているのが「モンゴル」の不動産だ。本連載では、ユニークな小口商品も含めてモンゴル不動産物件を開発・販売している株式会社インベスコア代表の小林・リヒャルド・ワルター氏と、アジア諸国を中心とした投資不動産物件を数多く紹介するポータルサイトを運営し、クロスボーダーでの不動産取引のサポートを行っている株式会社BEYOND BORDERS代表取締役・遠藤忠義氏にお話を伺う。前編のテーマは、投資先としての「モンゴル」の可能性である。

日本最大級の海外不動産ポータルサイト
「SEKAI PROPERTY」とは?

―― モンゴル不動産の魅力についてお話を伺う前に、まず、BEYOND BORDERS社が運営するWebサイト「SEKAI PROPERTY(https://ja.sekaiproperty.com/)」について、簡単に教えてください。

 

株式会社BEYOND BORDERS 代表取締役 遠藤忠義氏
株式会社BEYOND BORDERS
代表取締役 遠藤忠義氏

遠藤 「SEKAI PROPERTY」は、東南アジアを中心に、30か国以上の投資物件を扱う海外不動産のポータルサイトです。海外の投資家に向けた日本不動産の紹介も行っていますので、正確にはクロスボーダー不動産取引(※国境を越えて行う不動産取引)のポータルということになります。

 

このような趣旨のWebサイトとしてはおそらく国内最大規模で、現在では月間約1,000件のお問い合わせをいただくまでに成長しています。サイトのみでなく、メールマガジンやラインアットでも情報を発信しており、好評をいただいております。また、Webサイトでの情報発信だけではなく、自らエージェントとして動いて、投資家の方をサポートする事業も行っています。

 

―― エージェント事業も行われているということは、単に情報を仲介するだけのプラットフォーマーではないということでしょうか。

 

遠藤 プラットフォーマーではありますが、同時にその物件をジャッジする立場でもあります。「SEKAI PROPERTY」では、投資物件の情報を精査して、お勧めしても大丈夫であると判断したものだけを掲載しています。現在、世界各地の業者さんから、掲載希望の物件情報がどんどん寄せられているのですが、正直申しまして、そのうちの多くは掲載をお断りしている状況です。

 

物件の評価にあたっては、私も含めた弊社社員が必ず現地の物件を見に行き、入念にチェックを行います。そのため、書類の数字では良さそうだったのに、現地で実際に物件を見てみたら、弊社の基準には達していなかったというケースもよくあります。世界中を飛び回って直接チェックをしているため、手間も時間もかかりますが、現地の物件を実際に見ることなく買われる投資家の方も多いので、私たちが代わりにこういったリアルでの物件チェックを行うことは絶対に欠かせないと考えています。

 

経済成長はフィリピンやベトナムなどとほぼ同水準に

―― 30か国以上の投資物件を扱われているということですが、その中で、今回のテーマでもある「モンゴル」については、どのように評価なさっていますか?

 

遠藤 今回のモンゴルの物件に関しては、私自身が非常に興味を持ったので、社員を同行して現地に飛び、3泊4日の滞在でチェックをしてきました。モンゴルに行ったのは初めてでしたが、中心街のビルやショッピングモールの賑わいには本当に驚きましたね。物件のある首都ウランバートルは、冬季でマイナス15度にもなる寒さにもかかわらず、多くの若者たちが夜の街にも繰り出しており、街全体に本当に活気がありました。

 

小林 マクロ的な数字で言えば、世界銀行のレポートによると、モンゴルの今後の中期的な経済成長は、マレーシアを上回り、フィリピンやベトナムなどとほぼ同水準になると予想されています。ところが、不動産投資という点から見ると、そういった東南アジア諸国に比べて、モンゴルは非常に出遅れています。おそらく、日本の投資家の方でも、投資対象としてモンゴルをチェックしていた方は少ないでしょう。これは、もともと観光地としての知名度が低かったことが、大きな要因ではないかと思います。

 

遠藤 現地に滞在して、モンゴルの料理が個人的に口に合ったということもあるかもしれませんが、レストランの食事が美味しいことも感動しました。その一方で、レジャー目的として訪れた場合、やはり冬の寒さは非常に厳しいかなと感じました。日本から遊びに行くなら、やっぱり東南アジアのリゾート地のほうが魅力的ですね。しかし、レジャーと投資とは別のものです。需要が伸びているところに、大きな投資のチャンスがあります。

 

モンゴルの伝統的な移動式住居であるゲル
モンゴルの伝統的な移動式住居であるゲル

小林 モンゴルと聞くと、「ゲル」と呼ばれる円形のテントに住む遊牧民をイメージされる方が多いかもしれません。モンゴルの人口は約310万人ですが、実際、そのうちの2割程度が、そういった遊牧民です。一方、首都のウランバートルには人口の約半数の150万人が暮らしています。首都では、オフィスに勤め、月500ドル程度の給料をもらっている中間層が増えており、こういった層は、だいたい40,000ドル程度のアパートメント(日本でいうとマンション)に住み、これを住宅ローンで購入するのが普通です。

 

ウランバートルにも、80万人程度が暮らすゲル地区がありますが、ゲル地区に住む人の3分の1は、銀行で融資を組んでアパートメントを購入できる信用があり、その人々を対象とする開発が進んでいます。2016年に現政権になって以降、景気が回復したことから、不動産需要が大きく伸び、今後も成長し続ける可能性は高いと思います。

 

遠藤 ただ、現地で気になったのは、かなり古そうな建物が現役で使われていることや、建設が途中で止まってしまった物件が散見されたことでした。

 

株式会社インベスコア代表取締役  小林・リヒャルド・ワルター氏
株式会社インベスコア代表取締役
小林・リヒャルド・ワルター氏

小林 60年以上前、旧ソビエト(現ロシア)時代に建てられたコンクリート住宅に、今でも多くの人が住んでいます。アメリカと覇権を争っていた当時のソビエトの建築技術の水準は比較的高く、また、寒冷で湿度が低い気候や、地震がほとんど発生しないといった要因もあり、モンゴルでは建物の寿命が長いのです。

 

ただ、デザインが武骨で、日本のような不動産管理の考え方が普及していないことから、外見はかなりみすぼらしい建物が多いことも事実です。また、リーマンショック後の投資ブームのときに企画され、プレビルド方式(※工事が着手される前に物件を購入すること)で販売されたものの、開発会社が資金ショートして、建築途中で止まってしまった物件も少なくありません。

 

遠藤 そのような状態のものが一部でもあることに不安に感じる方がいらっしゃるかもしれません。ただ、私も新興国の投資不動産を多く見てきた中で、新興国だからこそ、「国」というような大雑把な捉え方での投資は危険で、「デベロッパー」ごと、あるいは「物件」ごとに、その内容、リスク、リターンを丁寧にチェックすることが重要だと痛感しています。

 

その意味で、今回インベスコアさんが扱う物件は、モンゴルの中でも最高の立地に、世界水準で見て一流のサービスアパートメントを建てるという企画で、現地の富裕層からもかなり注目されているものになります。

 

―― 今回、遠藤社長がモンゴルに渡り、現地でご覧になったという物件ですね。では、どうしてそのような企画が可能になったのか。また、そこに日本から投資するメリット、そしてリスクについての詳細を次回お伺いしたいと思います。

 

高層ビルが立ち並ぶウランバートル中心部。無骨な外観が印象的だ(撮影/遠藤忠義)。
無骨な外観が印象的なビルが立ち並ぶウランバートル中心部
(撮影・SEKAI PROPERTY編集部)

取材・文/椎原芳貴 撮影(人物)/永井浩
※本インタビューは、2018年11月12日に収録したものです。

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