理想の家づくりの第一歩となるのが、施主の想いを実現する「建築家」との出会いである。本稿では、施主・建築家・工務店(スタジオ)が三位一体となった家づくりの基本的な流れを、日本最大級の建築家ネットワークを作り上げているアーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)株式会社スタジオネットワーク事業本部の石渡治氏に伺った。

大手メーカーと工務店(スタジオ)の違いとは?

これまで、注文住宅を建てる際、一般的には2通りの方法が考えられました。ひとつは、マスコミで広告展開をしているような有名ハウスメーカーさんに依頼する方法です。もうひとつは、知り合いや紹介を受けるなど、何らかの「つて」のある工務店さんに頼む方法です。

 

いずれにしても一長一短があります。ハウスメーカーの場合、工業的に作られた部材を組み合わせて作るので、一定の品質水準はクリアしますが、細かいカスタマイズの要望に応えてもらうことは苦手です。また、大手メーカーになると販管費、間接費が多くなるため、コストはやや高めになります。

 

一方、多くの中小工務店の場合、工法などに得意・不得意があります。その工務店の得意な工法で「おまかせ」で頼む場合はいいのですが、不得意な工法には対応が難しくなります。中には、技術水準があまり高くない工務店もあり、それを事前に見分けることは簡単ではありませんでした。

 

また、理想の住宅を建てるために「建築家」に設計をお願いしようと考えたとします。その場合、まず自分の感性に合う建築家を見つけることが難題です。候補となる建築家が見つかったとしても、その方に提案を依頼して提案書を作成してもらうだけで一定の費用がかかります。それが気に入ればいいですが、気に入らない場合は、また別の建築家を探さなければなりません。

 

納得のプランができるまで、何度もやり直しが可能

アーキテクツ・スタジオ・ジャパン株式会社
スタジオネットワーク事業本部
第2営業部 グループリーダー 石渡治 氏
アーキテクツ・スタジオ・ジャパン株式会社
スタジオネットワーク事業本部
第2営業部 グループリーダー 石渡治 氏

そこで私たちは、「さまざまなタイプの建築家」と「一定の技術水準をクリアした工務店」の全国ネットワークを構築し、理想の住宅づくりを望むお客様にご紹介するシステムを作り上げました。15年という時間をかけて作った私たちのネットワークには、現在、約2800名の建築家と、167スタジオの工務店が登録しています。

 

では、具体的には、どのようにして建築家との家づくりを進めるのでしょうか。

 

まず、私たちが日本各地で随時おこなっている「建築家展」などのイベントやセミナーにご来場いただくと、担当者が基本的なご要望をお伺いして、ご希望に合いそうな建築家の候補を、数名ご紹介します。

 

また、イベント会場で実際に建築家とお話をしていただき、住宅に対する感性や、話しやすさなどの人間的な面でも感覚が合いそうな建築家がいれば、そのままプランニングを依頼することもできます。

 

依頼を受けた建築家は、実際のお客様の土地を見学に行き、土地の状況、周辺の状況を調査して、プランニング設計を行います。そして、CGパースや、立体模型などのわかりやすい形でプランをご提示します。

 

お客様が、そのプランを気に入っていただければ、契約に進むかたちですが、もしそのプランが気に入らなければ、その建築家に他のプランを出してもらうこともできますし、別の建築家を選んで、再度プランニングしてもらうことも可能です。この契約前のプランニング提案は、お客様が心から納得できるプランができるまで、何度でもやり直すことができます。また、実際に契約を結ぶまでは、プランニングに関する費用は一切発生しません。

 

そして契約後は、お客様、建築家、工務店と三者共同でのお打ち合わせを重ねながら、より具体的な設計を作り上げていきます。

 

実はコスト面でも有利な「建築家」の設計住宅

たとえばスーツなどの場合、既製品よりオーダーメイドのほうが高いのが常識です。そのため住宅に関しても、建築家に依頼したフルオーダーの注文住宅となると、かなりコスト高になると考えられるかもしれません。しかし、それは完全に誤解です。

 

ハウスメーカーの住宅の場合、標準規格が決められているので「ここだけコストダウンをする」といったフレキシブルな対応は得意としていません。ところが建築家が作る家の場合、フルオーダーメイドになりますので、どのようなカスタマイズも可能です。予算が潤沢にあれば全体に豪華な部材を使うこともできますし、逆に低コストで作りたいのであれば、そのような部材のチョイスや設計も可能です。

 

通常は、一定の予算がある中で、お客様が「ここだけは思い通りにしたい」というポイントがあります。たとえば、リビングルームだけは豪華にしたいとか、バスルームにこだわりたいなどです。そういう場合に、お客様が重視するポイントには予算を掛けて、その分、あまり重視されない部分のコストは抑えるという対応ができます。

 

こうして、総額コストは抑えながら、より満足度が高い住宅を作ることができるのです。自分の感性を完全に反映できるということに加えて、コスト面でも有利であることが、建築家による設計住宅の大きなメリットになります。

 

一方、デメリットとして、完成までの納期に時間がかかることが挙げられます。ハウスメーカーの場合、通常、半年から長くても1年程度で家が完成します。一方、建築家による設計住宅の場合、設計の段階で、極端に言えばすべての部分について、建築家と、工務店とお客様とで相談しながら決めていきます。そのため、設計だけで半年から1年、大きな住宅であれば2年かかることもあります。

 

工事期間はさほど変わりませんが、この設計期間の長さのために、完成までの時間がかかることが、建築家による設計住宅のデメリットになります。

 

いずれにしても、私たちのシステムをご利用いただければ、プランの提案までは無料で受けることができます。

 

「建築家が作る家ってどんなものなのだろう?」 

 

最初はそんな素朴な興味でいらっしゃるお客様がほとんどですので、三位一体の家づくりに興味を感じられた方は、一度建築家の方と気軽にお話をしてみてはいかがでしょうか。

 

取材・文/椎原芳貴
※本インタビューは、2018年4月20日に収録したものです。

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