高齢者の健康を支えたい・・・筆を取った「名誉教授」の事例

今回は、高知医科大学の名誉教授がなぜ「本」を執筆したのか、その理由をインタビュー形式で探ります。※本連載では、毎回ひとつの事例をあげ、なぜ人々は本を出すのか、そして、本を出すことでどんなドラマが生まれるのかを探っていきます。

健康寿命に影響する「フレイル」を啓蒙したい

森惟明氏は高知医科大学の名誉教授である。なぜ多忙な業務の傍らで筆をとり続けてきたのか。著書『活力低下を感じていませんか? 知っておきたい高齢者のフレイル』を執筆された経緯を聞いてみた。

 

――出版をされたきっかけ・目的は何ですか?

 

高齢者は、容易に健康障害につながる心身の脆弱な状態にあります。フレイルは聞き慣れない言葉ですが、超高齢社会のわが国において、今後、健康寿命を延ばす上で非常に重要な包括的概念です。しかし現在までのところ、フレイルに関する一般啓発書は刊行されていません。

 

筆者ら自身、年齢を重ねて身体のあらゆる部分に加齢に伴う変化が始まっている当事者であることから、高齢者のフレイルをどのようにして予防し、対策を講ずるかを日々考えさせられる立場にあります。

 

そこで、これまでに習得した知識と経験をもとに、高齢者にとって最重要課題であるフレイルに関わりたいという思いが、本書を出版する端緒となりました。

 

――出版前後でどのような変化がありましたか?

 

フレイルは重症でなければ正常な状態に戻せますので、予防と同時に早期の対策が大切な状態であることを強調してきました。物心ともに喪失が多くなる高齢期に、フレイルにいかに対処するかを、筆者らの実体験もまじえて伝えてきました。

 

献本した多くの知人から頂いた感想を読んで、本書が、これからの高齢者が健康寿命を延ばし、自分の夢や目的を達成できる理想的な加齢を満喫していくのに役立てる書籍に仕上がったと感じ、満足しています。

 

フレイル対策は、自助の他、地域の共助、国家の共序と公助を必要とする国民的課題であることを認識していただけたと考えています。

 

 

――「フレイル」について、またご著書についてご紹介をお願いします。

 

日本整形外科学会の提唱する「ロコモ」は運動器疾患を想定した概念です。「フレイル」は運動機能障害をきたす原因となる疾患の意識が少ない概念ですが、「ロコモ」は「身体的フレイル」に含まれる病態です。

 

同じ目的のもと、共通の病態や問題点に対処するために提唱された2つの概念が、それを提唱する学会ごとにニュアンスが異なります。

 

今後、2つの概念が発展的に融合することを目指し、老年科医と整形外科医が垣根を越えて協力して超高齢化社会の課題解決のために国民に広く働きかけていくことが重要と本書を執筆する過程で考えました。

 

また、高齢者の加齢の伴う健康障害を表す「老年症候群」という言葉があります。この言葉は内容的には「加齢症候群」と同じで、主として老年医学を専門とする研究者の間で使われています。しかし「老年症候群」と言う言葉はネガティブなイメージが強く、今後は「加齢症候群」という用語に置き換える必要があると考えます。

 

従来「老年症候群」として挙げられていた加齢に伴い起こる症状や障害は、身体的並びに精神・心理的フレイルで出現する症状・障害に該当するものと考えます。

 

 

森惟明 著

『活力低下を感じていませんか? 知っておきたい高齢者のフレイル』

 

 

フレイルは虚弱の意味で、主に高齢者の、健康な状態から要介護状態になるまでの中間の状態を指します。フレイルの早期発見は寝たきりや認知症の予防になるので、厚生労働省でも取り組みを始めています。

フレイルは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)などを含む身体的フレイル、軽度認知障害(MCI)、老人性うつなどを含む精神的フレイル、孤立・貧困などを含む社会的フレイルで構成されます。

高齢期は人間の第二の青春。フレイル対策を行って、自分の夢や目的を達成できる、元気に自立した老後を満喫しましょう。

 

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