今回は、子どもたちの気持ちを〝わかったつもり〞になってしまう、親の危うさについて考えていきます。※本連載は、子どもたちのやる気を引き出し、考える力をはぐくむ"しつもんメンタルトレーニング"を考案したスポーツメンタルコーチ、藤代圭一氏の著書、『スポーツメンタルコーチに学ぶ! 子どものやる気を引き出す7つのしつもん』(旬報社)の中から一部を抜粋し、"質問"で子どものやる気を引き出す指導法を紹介します。

「たぶんレギュラーになりたいんだよね?」

お父さんお母さんが子どもたちに「スポーツを一生懸命やって欲しい」と願うのはなぜでしょう?

 

お父さんがそのスポーツをやっていたから、チームスポーツで協調性を身につけて欲しいから、など理由はたくさんありますが、スポーツをはじめた動機を聞いてみると、「子どもがやりたいと言ったからやらせてあげたい」という”子ども発信”であることが多いのです。

 

「こんなに毎日練習に行ってるんだから…たぶんレギュラーになりたいんだよね?」

 

「サッカー好きなんだよね? だから・・・きっとうまくなりたいんだよね?」

 

その「たぶん」や「きっと」は、子どもたちの気持ちを〝わかったつもり〞になっている危険信号です。

 

子どもたちのしたいこと、やりたいことをイメージしたときに「たぶん」「きっと」という言葉が口から出てくるのは、子ども自身がどうしたいのかという心の声を聞いたことがないからかもしれません。

自分が「本当にやりたいこと」を言い出せずに…

「実力は問題ないんですが、チームとうまくいってなくて、いまはセカンドチームにいるんですよ」

 

あるとき中学校3年生のお母さんからこんな相談を受けました。小学生年代のときにナショナルトレーニングセンターに参加するなど、サッカーの実力はコーチもチームメイトも認めているにもかかわらず、トップチームのチームメイトとどうも反りが合わない。お母さんは「もう一度トップチームに戻るためにはどうしたらいいでしょう?」と相談にきてくれました。

 

私がまずたしかめなければと思ったのは「本人はどうしたいのだろう?」ということです。そこで、お母さんとは別に、その男の子にも話を聞いてみることにしました。

 

「いま、セカンドチームでプレーしているんだってね。最近はどう?」

 

その子は私のしつもんに少しの沈黙の後、こんなふうに答えてくれました。

 

「いまのチームで友達とプレーするのが楽しい。トップチームでプレーするより、楽しくサッカーがしたい」

 

つまり、子どもの思いは、お母さんが「こうだろう」と思っていたこととはまったく違いました。「たぶん、トップチームに戻りたいに違いない」と思ったお母さんは、息子になにも聞かずに、いまの状況が「悪い」と決めつけて、トップチームに戻れるように励ましたり、方法を探ったりしていたのです。

 

お母さんに悪気がないどころか、子どもを思うあまりにとってしまった行動だというのは明らかです。でも、そんなお母さんを見たその子は「このチームで楽しくサッカーをしたい」という、自分が本当にしたいことをなかなか言い出せずにいたのです。

スポーツメンタルコーチに学ぶ! 子どものやる気を引き出す7つのしつもん

スポーツメンタルコーチに学ぶ! 子どものやる気を引き出す7つのしつもん

藤代 圭一

旬報社

サッカーや野球といったスポーツに限らず、習い事や勉強など、子どもたちのやる気を引き出すのは難しい…。 「どうしたら、子どもたちがやる気を出してくれるんだろう?」 実はこれは、数年前までスポーツ指導の現場にい…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録