いわゆる「大地主」を悩ませる莫大な相続税。本連載では、株式会社鹿谷総合研究所の代表取締役で、公認会計士・税理士でもある鹿谷哲也氏の著書『繁栄する大地主 衰退する大地主 節税プランの良し悪しと決断力の有無で大きく分かれます』(新評論)の中から一部を抜粋し、大地主が今後も「繁栄」していくための事業承継の進め方を解説していきます。

土地の評価額が2年で4倍になった時代

私はこれまで30年以上に亘って不動産オーナーの経営サポートに特化してやってきたのですが、長年こうした仕事に携わっていると実に様々な経験をします。その中でも特に大きな影響を与えたのがバブルの発生と崩壊です。

 

今でも鮮明に覚えておりますが、勤務していた証券会社のビルがあった日本橋では2年続けて路線価が2倍になりました。2年続けて2倍ということは土地の評価額が4倍になることを意味します。評価額が4倍になると相続税は累進課税ですから相続税はそれ以上に上昇します。

 

これがどういう影響を与えたのか、簡単な事例で解説しておきます。[図表1] の「バブルにより急減する土地の面積」という表をご覧下さい。

 

[図表1] バブルにより急減する土地の面積

 

この表はバブルが発生する前に相続が起きた場合とバブルの発生後に相続が起きた場合のそれぞれについて、所有地の面積がどのように変わってくるのかを比較したものです。

 

まず路線価ですが、バブルにより1㎡当たり100 万円だったのが4倍の400 万円になったとします。所有地の面積を1,000 ㎡と仮定しておりますので土地の評価額は10 億円が40 億円になります。

 

これに対する相続税を仮にバブル発生前は2 億円(平均税率20%)、発生後は20 億円(平均税率50%)とすると、相続税納税後の土地の面積はそれぞれ800 ㎡、500 ㎡となります(物納のケース)。

 

バブルが起きなければ200 ㎡の減少で済んでいたのが、バブルにより土地の面積が半分になったというわけです。

「延納」を選択した地主を襲った悲劇とは?

それでも、この事例のように土地を物納した人や土地を売却して現金で一括納付した人なら土地の半分程度は残ったのでまだ良かったのですが、延納した人は悲惨です。

 

どういうことかと言うと、取りあえず延納しておき土地が売却できた時点で現金納付しようとした方がかなりあったようですが、その後のバブル崩壊で土地の値段は下がる一方、思ったような価格ではなかなか売れません。

 

だからといって延納税額はバブル時の価格で算定されていますので土地の値段が下がったからといってまけてくれるわけではありません。こうしたことから延納を選択した方はほとんどの土地が無くなったのではないでしょうか?

本連載は、2017年2月25日刊行の書籍『繁栄する大地主 衰退する大地主 節税プランの良し悪しと決断力の有無で大きく分かれます』から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

繁栄する大地主 衰退する大地主 節税プランの良し悪しと 決断力の有無で大きく分かれます

繁栄する大地主 衰退する大地主 節税プランの良し悪しと 決断力の有無で大きく分かれます

鹿谷 哲也

新評論

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