資産形成における「ポートフォリオ」の重要性と構築のポイント

今回は、資産形成における「ポートフォリオ」の重要性と構築の基本ポイントを見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

特定資産に偏った投資は、リスク顕在化時の損失が大

2016年はリートが活況でした。投資信託を資産別にみると、ネットでの資金流出入情報では国内外のリート資産を組み入れた投資信託で約2兆円以上の資産が流入しました。

 

このように、その時の経済環境や金利水準によって過去を振り返ると、先進国の債券、米国を中心としたハイイールド債券、ブラジルなどの新興国債券や高金利の通貨選択型ファンドのような、金利によって収益を得られる資産の投資信託が選好されてきました。

 

日本の投資信託の保有状況によると、こういった特定の資産を組み入れる投資信託を1ファンドだけ保有している個人が全体の半分弱を占めており、それも、比較的リスクの高いリートや株式が、かなりの割合を占めています。

 

図表1は、円の大きさで公募販売されている投資信託の資産残高を示しています。縦軸はリターン、横軸には価格変動リスクの大きさを表しています。図の右側に位置しているリスクが高い資産は、残高構成が大きいことがみてとれます。

 

[図表1]投資対象資産の残高構成とリスクの大きさ

特定資産に偏った投資は、順調にいっているときは良いのですが、投資している資産の環境が悪くなると大きな損失を被るリスクを抱えています。特に、過度に高い金利を得ようと信用リスクが高い新興国の債券に集中投資をした場合、そのリスクが顕在化すると、個人にとって思ってもみなかった損失を被ることさえあります。

 

最近では、政情不安のトルコやトランプ大統領による政策の影響を大きく受けそうなメキシコもそうです。大きな損失を経験した個人のなかには「もう投資はコリゴリ」という人も出てくることになりますが、それでは長期の安定した資産形成には結び付きません。

 

これらに対して、資産形成を「ポートフォリオ」として考えることへの意識が高まっています。

 

ポートフォリオとは、簡単にいえば複数の資産をバランスよく保有することで、年金の運用をしている世界では基本的な考え方です。複数の資産を保有することで、特定の資産だけに投資する偏ったリスクを分散することができます。加えて、組み入れた資産同士がお互いの価格変動を打ち消しあって、全体のリスクを抑えることが期待できます。

 

これこそがまさにポートフォリオの効果です。リスクを抑えてくれるので、投資効率の指標であるリターンとリスクの関係は改善します。

複数の資産を組み合わせることでリスクが低減

この効果についてもう少し詳しくお話しましょう。わかりやすくするために、投資効率を栄養素の吸収率に置き換えて説明します。

 

栄養素を効率よく吸収するには、別々に食べるよりも食べ合わせの良い食物を食べることが効果的です。たとえば、豆腐と小魚を一緒に食べると、別々に食べるよりも豆腐のタンパク質と小魚のカルシウムの吸収率がそれぞれ1割高まるとしましょう。個々に食べると、豆腐のタンパク質は100のうち20が吸収され、小魚のカルシウムは100のうち10が吸収されるとします。これを食べあわせることによって、1割少ない量で同じだけの栄養を吸収することができます。

 

ここで吸収する栄養素をリターン、そのために食べる量をリスクに置き換えてみてください。少ない量(リスク)で同じだけの栄養素(リターン)を吸収できることこそが、ポートフォリオによる投資効率の改善効果です。もちろん、豆腐と小魚の両方を食べることで片方だけを食べるよりも摂取できる栄養素は広がり、栄養の偏りを防ぐことができます。

 

図表2は、日本株式と外国債券を半分ずつ組み合わせた場合のポートフォリオの効果を示しています。資産を組み合わせることにより、期待するリターンは各資産の平均になりますが、価格変動のリスクは平均よりも小さくなります(図の横軸では左側に位置することになります)。

 

[図表2]複数の資産を組み合わせることによるリスク低減効果

リスクを下げる「相関が低い」資産の組み合わせ

では、豆腐と小魚のような食べあわせの良さは、投資においてはどういった組み合わせになるのでしょう? また逆に、うなぎと梅干しは食べあわせが悪いといいますが、こういうケースもあるのでしょうか? 

 

投資において、「食べあわせ」の良い組み合わせには2つの考え方があります。

 

1つは、価格の動きが似通っていない資産を組み合わせることです。さきほども触れましたが、異なる価格の動きによってそれぞれの価格変動の影響を打ち消しあってくれるからです。これを相関が低い関係と言います。日本株式と外国株式のような株式同士、また、為替変動の影響を受ける外国資産同士であれば相関は比較的高いのですが、債券と株式では価格が動く要因が同じとは限らないことから相関が低い資産の組み合わせになります。

 

もう1つ、食べあわせの良い組み合わせとして知っておきたいことは、2資産よりも3資産といったように特徴の異なる資産を数多く組み合わせることにより、価格変動の影響を安定的に打ち消しあう効果の高まりが期待できます。

 

たとえば国内の株式・債券に外国の株式・債券を組み合わせたバランス型のファンドはその典型例です。そういう意味では、同じタイプをいくら組み合わせても効果は乏しいです。

 

ポートフォリオの理屈上では、うなぎと梅干しのように組み合わせることによってリスク特性がマイナスの影響を及ぼすことはありません。組み合わせた資産の価格の動きが同じ(相関が1)の場合には効果がなくなるだけであり、複数の資産を組み合わせることは、少なからずプラスの効果を生じます。

 

食事では食べ合わせの良い料理が好まれるように、投資でも組み合わせが大切なのです。私たちも上手に食べ合わせたいものですね。

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三菱アセット・ブレインズ株式会社 シニアコンサルタント

慶応義塾大学卒、唐木研究会出身。三菱UFJ信託銀行において、投資の専門家として20代前半から数十年にわたり、ファンドマネージャー、トレーダーとして一貫して運用の最前線に身を置き、市場のなんたるかを体得。その経験をもって、現在は、投資信託の評価会社である三菱アセット・ブレインズ(MAB)において、投資信託の販売支援や投資教育などを通じ、個人が安心して健全な資産形成に励むことができるための啓蒙に取り組んでいる。
書籍『顧客をリスクから守る資産形成術』(きんざい)を始め、資産形成に関する記事を新聞、雑誌に多数掲載。

三菱アセット・ブレインズ株式会社(MAB)
http://www.mab.jp/

著者紹介

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