「組織再編」で自社株の評価を下げるダブルメリットとは?

前回は、納税資金の捻出方法の一つとして「自社株式の物納」について解説しました。今回は、事業承継をスムーズに行う方法として「組織再編」について見ていきます。

高収益事業の小会社化で自社株の株価を下げる

事業承継をスムーズに行うための方法として「組織再編」があります。組織再編の種類としては、次のようなものがあります。

 

〈組織再編の種類〉
・類似業種比準方式が使える大会社区分への改編
・持ち株会社の設立
・一部の事業の子会社化

 

中でも、高収益事業の子会社化は株価の引き下げに有効です。同族会社の株式の原則的評価方式としては、①類似業種比準方式、②純資産価額方式、③両方式の併用があります。評価会社の規模によって評価方式は異なりますが、類似業種比準方式を主とする企業の場合、高収益事業を切り離し、子会社化することで本体会社の利益を一気に圧縮し、株価を引き下げることができる場合があります。

 

子会社化によって株価の引き下げに成功したK社の事例をご紹介します。創業40年になるK社は、社長から後継者である長男への事業承継を考えるにあたって、高騰した自社株の引き継ぎに悩んでいました。そこで、一部の高収益事業を分離し、子会社とする組織再編を実行しました。これによりK社は、株の評価を6億円から約1.2億円まで、約5分の1に引き下げることに成功したのです。

組織再編で後継者の存在を周りにアピールする

また、子会社化にはもうひとつのメリットがありました。長男を子会社の社長にしたことで、本人に自信をもたせることができたとともに、息子が大きな成果を上げたことで、非同族役員や社員の間では社長の長男をK社の次期後継者として迎えることの納得感が広まったのです。

 

このように、組織再編による子会社化には、株価の引き下げだけではないメリットが存在するといえます。子会社化の注意点は、事業の分離後に親会社の規模を「大会社」のまま保つということです。純資産価額方式だと子会社株式の評価により分離後の価値増加を計算されてしまいますが、類似業種比準方式の場合は子会社株式の評価替えが不要というメリットがあります。

 

「利益圧縮」「資産整理」「組織再編」の三つをバランスよく組み合わせることで、株価を効果的に引き下げることができます。これらの三つをトータルで相談できる専門家に相談をし、最適な方法を検討するのが望ましいでしょう。

本連載は、2015年9月2日刊行の書籍『財を「残す」技術』 から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載会社に財を「残す」ための経費化のテクニック

株式会社東京会計パートナーズ 代表取締役

1960年東京都生まれ。大手損害保険会社を経て、1999年に生命保険を活用してオーナー企業の事業承継を支援するコンサルティング会社、ヒューマンネットワーク株式会社を設立、代表取締役に就任。2013年にはグループ会社として、オーナー個人の税務戦略に特化したコンサルティングを行う、株式会社東京会計パートナーズを設立、代表取締役に就任。1600人を超えるオーナー経営者や医療法人理事長を顧客とし、総合的な資産防衛のアドバイスを行っている。

著者紹介

財を「残す」技術

財を「残す」技術

齋藤 伸市

幻冬舎メディアコンサルティング

成功したオーナー経営者も、いずれは引退を考えなければいけない。そのときに課題になるのが、事業とお金をいかに残し、時代に受け継ぐかである。 保険代理店業を主軸として、オーナー社長の資産防衛と事業承継をコンサルティ…

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