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連載「実物資産」「ペーパー資産」のバランス投資で財産を守り抜く【第6回】

投資対象としての「クラシック・コイン」をどう考えるか?

オークションクラシック・コイン

投資対象としての「クラシック・コイン」をどう考えるか?

今回は「10の投資」実物資産編③として、活用している人はまだ少数派ではありますが、実物資産としての一つとして着目したい「クラシック・コイン」について見ていきます。

日本における収集家は2万人前後といわれるが・・・

投資対象として「クラシック・コイン」(図表1)といわれても、ピンと来ない方が大半だと思います。株式や債券などの投資には慣れている人でも、クラシック・コインまでカバーしている人は数少ないのではないでしょうか。実際、今の日本におけるクラシック・コイン収集家の人口は、せいぜい2万人前後といわれ、少数派であることは確かです。

そもそも、クラシック・コイン(アンティーク・コインとも呼ばれます)とは、現在世界中で大量生産されている流通用のコインではなく、「古い時代の歴史的な価値を持つ金貨や銀貨」のことを指しています。

 

収集家の多くは、美術品や切手などを集めるのと似たような感覚で、その美しさを賞玩するために集めています。筆者自身も、さかのぼること40年以上前の小学生時代から、趣味としてクラシック・コインの収集を始めました。

 

収集対象としてのクラシック・コインの魅力は、まずその一枚一枚から歴史の重みを感じられるところです。たとえば、筆者が保有する中に、今からおよそ2000年前――古代ギリシャ時代(日本でいうなら縄文時代です)に、首都アテネ周辺で鋳造されたクラシック・コインがあります。図柄はユーモラスなふくろうの絵で、クラシック・コイン収集家の間では人気のある一枚です。

 

このクラシック・コインが、2000年の間に一体どのような人の手に渡り、その持ち主たちはこの銀貨と引き換えに、どんなものを手に入れたのか。そして、どんな旅の末に、今日本の一収集家の手に収まったのか……などと考えだすと、わくわくしませんか? 

収集家は世界中で増加、値上がりしやすい状況?

ただし、ここでこうしてクラシック・コインのお話をしているのは、収集品としての魅力にとどまらず、実物資産としての価値もあるからです。

 

クラシック・コインは地金型コイン、あるいは株式、債券などとは異なり、原則として再生産されることがありません。そのため、絶対数がごく少量に限られています。これに対し、収集家は(日本ではまだ少数ですが)世界中で増加の一途をたどっています。クラシック・コインの数は限られている一方、収集家が増えていきますから、極めて値上がりしやすい状況にあるといってよいでしょう。

 

とりわけクラシック・コイン収集家が集中している米国では、大規模なクラシック・コイン市場が整備されています。収集家は富裕層・知識階級が多く、クラシック・コインに精通することは一種のステータスであり、紳士・淑女のたしなみといった趣すらあります(とはいえ、今のところ収集家の大半は男性のようです)。

 

収集家には、昔からユダヤ系の人が多いという特徴もあります。ご存じのように、ユダヤ系の人々は各地で迫害され、流浪の人生を余儀なくされた歴史を持っています。彼らにとって持ち運びが容易で、価値と換金性が高いクラシック・コインは、大切な資産のよりどころだったのでしょう。

クラシック・コインを持つメリットとは?

クラシック・コインの価値は、「希少性」や「デザイン」、そして「保存状態」によって決まります。もちろん、金貨には「金」という物質そのものとしての価値もありますが、それ以上に価格を大きく左右するのが、この3点です。

 

古い時代のものや、何らかの理由で鋳造枚数の極端に少ないものは希少性が高く、当然のことながら収集人口の増加に伴って、価格が急騰します。

 

日本のクラシック・コインでいうと、たとえば明治時代に発行された「旧20円金貨」がそうです。発行枚数は最も多い明治3年コインですら、わずか5万枚にも届かず、今日では状態のよいものなら1枚で1000万円近くの取引価格となります。

 

海外のクラシック・コインの場合、英国で1839年に発行された「ウナ&ライオン」もまた、かなり高値で取引されています。こちらの発行枚数は、わずか400枚しかありません。2012年に日本で行われたオークションでは、状態がイマイチであったにもかかわらず、落札価格が900万円にもなりました。

 

クラシック・コインはあらゆる国で作られ、その時代時代で各国を象徴するような人・モノなどが刻印されていますが、特にデザインが優れているものについては、人気が集中して、高額で売買される傾向も見られます。

 

ただし、どんなに希少で美しいクラシック・コインでも、保存状態が悪いと価値も損なわれてしまいます。また、クラシック・コインの洗浄や磨きが、コインの価値にとって大きなマイナス要因になるので、その点でも注意が必要です。特に欧米では、銀貨や金貨の錆を、「古色」と考えてむしろ珍重する傾向にあります。

 

よって、みなさんが高いお金を支払って買ったクラシック・コインが、仮に錆びていたとしても、決して磨いてはいけません。日本でも古来より、錆によって表面が腐食した銀は、「いぶし銀」と呼び、好ましい評価を受けてきましたが、欧米の銀貨に対する見方にも、これに相通じるものがあるようです。

 

このような銀貨を酸で洗浄したり、あるいは銀磨き専用の布で磨いたら、その時点でアウト。場合によっては、価値が数十分の一ということになりかねません。クラシック・コインを手に入れたら、できるだけそのままの状態で専用の保存ケースに入れ、大切に保管してください。

持ち運びが容易で換金性もあり、有事の際は頼りになる

さらに、前述のとおり、近年はクラシック・コイン収集家の数が増えてきました。つい数年前にも、ロシアや中国のクラシック・コインが暴騰したことがあります。中には1年で10倍近く価格が上がったコインもあったほどです。これは、経済成長が著しい両国で、富裕化した国民が投資対象として自国のクラシック・コインに着目するようになったからでしょう。

 

今後も、同様のことが起こる可能性は高いといえます。たとえば、南米や中米は、かつてスペインやポルトガルの植民地だった地域ですが、このような国では本国の元首の肖像が刻印された金貨や銀貨が豊富にあります。前述のロシアや中国同様、この地域が今後経済的に成長するとしたら、クラシック・コインの相場の水準も、過去とは一変する可能性はあるでしょう。

 

一方で、急騰したものは急落するのが世の常です。クラシック・コインもまたその急落とは無縁とはいい切れません。ただし、全般的にクラシック・コイン収集家は、目先の価格変動をさほど気にせず、長いスパンで保有する傾向が強いといえます。株式や債券といったペーパー資産のように、下落局面で投げ売りするような人はあまりいません。そのため、保有者は値下がりから受けるストレスをさほど感じる必要はないといえるでしょう。

 

さらに、クラシック・コインは有事にも頼りになる存在です。かつてユダヤの人々がそうしたように、もし万が一のことが起きたとしても、究極の実物資産としてみなさんを救ってくれるでしょう。

 

持ち運びが容易で、それなりの換金性もあります。極端な例ではありますが、かつて欧州が第二次世界大戦の戦火に覆われたとき、富裕層の中にはクラシック・コインのコレクションを抱えて、国境を越えた人も多かったと聞きます。

 

また、その大戦の最中においても、スイスでコイン・オークションが悠々と開催されていたのは、有名な話です。そのような究極の危機下ですら、クラシック・コインはその価値を維持しました。このような観点で、金と並び、クラッシック・コインは評価されてよいと思われます。

クラシック・コインを持つデメリットとは?

クラシック・コインへの投資を筆者は推奨しますが、ある程度の勉強は、特にこれから始める人には必要です。

 

クラシック・コインの価値を決める要素である希少性やデザインなどは、一朝一夕には良し悪しを判断しづらいもの。また、保存状態についても細かく等級があり、このような点でも経験を積む必要があります。ですが、クラシック・コインの世界にどっぷりはまってしまえば、勉強といっても楽しみながら取り組めること請け合いです。

 

勉強なしで臨み、コイン商などのプロにも頼らず、自分でクラシック・コインを買おうとすると、偽物をつかまされるリスクが大変高くなります。残念なことに、実物資産としての魅力が注目されるにつれて、市場に出回るクラシック・コインの偽物も増加してきました。

 

たとえば、クラシック・コインは大手ネットオークションサイトでもよく出品されていますが、その中には明らかに偽物とわかるものも散見されます。特に中国のコインに関しては、その大半が偽物だといっても過言ではありません。

 

プロにいわせると、極めて精巧に作られていても、材質がおかしかったり、図柄のバランスが不自然だったり、あるいは相場に比べて明らかに安く出品されているなど、すぐにそれとわかる場合も多いようですが、素人や、素人に毛が生えた程度の収集家では、これらを見抜くことは至難の業です。

 

場合によってはプロのコイン商でも、偽造を見抜けないことがあるほどだといいます。したがって、偽物をつかむリスクを避けるには、本当に信頼できるコイン商を見つける必要があるのです。

 

そのほか、クラシック・コインには盗難リスクもあります。これを予防するためには、金地金などと同じで、貸金庫を利用するのが一番でしょう。

 

買うタイミング

収集家の人口は年々増えていますが、まだこれからも増え続ける見込みが大きいと考えられます。ということは、今後もクラシック・コインの価格が上昇する可能性は高いわけです。もし、みなさんが資産の一部にクラシック・コインの組み入れを検討しているのであれば、躊躇なく早々に開始することをおすすめします。

 

繰り返しになりますが、近年はロシアや中国などの新興国の収集家が増えてきました。新興国の新富裕層は、まず自国のクラシック・コインから集める傾向があるため、ここ数年でロシアや中国のコイン相場が急騰したのは先述のとおりです。この先の経済成長に伴い、たとえばインドやブラジル、ASEAN諸国などの新興富裕層が増加していけば、これらの国のコインも値上がりする可能性が高いといえます。

 

どこで買えばよいか

偽物のリスクを考えると、ネットオークションはやめておいたほうが無難です。インターネットで注文できて簡単ですが、現物を見る機会がない購入は、かなり危ない綱渡りとなってしまうからです。

 

特に、高額なコインの購入は避けてください。実のところ、筆者自身も何度かネットオークションで偽物をつかまされたことがあります。少額だったので笑い話で済みましたが、高額コインだと笑ってばかりはいられません。みなさんもネットオークションにはご注意ください。

 

おすすめしたいのは、クラシック・コインに精通するコイン商の店に足を運ぶことです。ただ、これまでクラシック・コインのことなど聞いたこともなかったような人にとって、コイン商といわれてもどこでどう探せばいいものか、想像がつかないのではないでしょうか。

 

三大都市圏には、信頼するに足るコイン商が数社ありますが、筆者自身が以前からお世話になっているコイン商は、「ワールドコインズ・ジャパン」です。趣味と資産運用を兼ね、よく訪れているのですが、その度にいろいろと教えてもらっています。そして、勉強しながら気に入ったコインを少しずつ買い集めています。単にコインを売るのではなく、収集するにあたっての適切なアドバイスもしてもらえるので、特にこれからクラシック・コインの収集を始めようという人におすすめします。

本連載は、2013年12月19日刊行の書籍『日本が財政破綻しても資産を奪われない10の投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

田中 徹郎

株式会社 銀座なみきF P事務所 代表

ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリス ト。神戸市出身。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1 9 9 0年ソニー入社。おもにマーケティング畑を歩む。2 0 0 4年に退 社後、ソニー生命を経て独立。現在に至る。 現職では、会社員時代から独自に積み上げてきた豊富 な金融・経済の知識を武器として、資産運用アドバイ スを展開する。その理論の明確さで幅広い支持を集め、 数多くの富裕層の顧客を抱えるようになる。自身も株式投資歴は長く、不動産投資も行う。また趣味として クラシック・コイン、紙幣などの収集を手掛けており、 経験に裏打ちされたわかりやすい助言には定評がある。 著書に『50歳からの30年‼ ゆうゆう生きるお金学  あなた! 年率7%で資産運用できますか?』(こう書房)がある。

著者紹介

連載「実物資産」「ペーパー資産」のバランス投資で財産を守り抜く

日本が財政破綻しても資産を奪われない10の投資

日本が財政破綻しても資産を奪われない10の投資

田中 徹郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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