「給与所得控除」「公的共済」を活用した節税法

前回は、「分割払いによる法人への資産移転」について説明しました。今回は、「給与所得控除」や、小規模企業共済、経営セーフティ共済といった「公的共済」を利用した節税法について見ていきます。

家族を役員にして「給与所得控除」を使うと・・・

法人化することによって、相続税が節税できるといったさまざまなメリットがありますが、実は会社の株主である本人、そしてその妻や子どもも会社役員や従業員にすることで、数多くのメリットを享受することができます。

 

もともと個人の場合は、所得がどんどん増えていくと累進課税制度によって実効税率が上がっていくことになります。

 

平成25年の改正では、個人の所得税の最高税率は45%になり、住民税を合わせた実効税率は最高で55%にも達します。個人事業税の5%も加味すると、実に60%の最高税率になってしまいます。ですが、法人の法定実効税率は現在約38%です。中国や韓国に比べても10%以上も高くなっており、税率はいずれ大きく引き下げられる方向にあると考えられます。

 

つまり、個人がそのまま所得税を申告するよりも、法人を通し、法人税として納税したほうが有利になるわけです。

 

さらに、妻や子どもを役員や従業員として雇うことにもメリットがあります。給与所得に対しては、経費を認めない代わりに「給与所得控除」として、あらかじめ必要経費が差し引かれるようになっています。収益不動産などから得られる所得を、法人から役員、社員に給料を支払う形で分散することで、自動的に「給与所得控除」が受けられるようになり、節税になるということです。

 

つまり、入ってくる所得を家族に再分配できるのも、法人化の節税テクニックのひとつであり、また大きなメリットといえます。

 

給与所得控除というのは、単純に給与所得等の収入金額が180万円以下であれば、収入金額の40%(65万円に満たない人は65万円)が給与所得控除として処理されます。収入金額によって異なりますが、例えば妻に300万円の給与を支払えば、108万円を給与所得控除として差し引いてくれることになります。給与所得控除が使えるだけでも、法人化のメリットは大きいかもしれません。

掛け金を「経費」扱いできる公的共済を利用

さらに、法人化することで税金を節約するテクニックがもうひとつあります。「小規模企業共済」や「経営セーフティ共済」といった公の制度を使って節税する方法です。小規模企業共済というのは、個人事業主の退職金制度と考えればよいでしょう。中小企業経営者の退職金制度ですが、従業員20人以下の個人事業主、または法人の役員が対象とされていますから、家族を役員にしている人は、加入しておくと掛け金は全額必要経費として所得控除することができます。

 

毎月の掛け金は、最高7万円まで。ただし、この制度は20年以上加入しないと満額の返戻金は受け取れません。相続税の節税のためだけに加入するのであれば、ちょっと考え物かもしれません。さらに小規模企業共済は、給与所得者が副業的にアパートやマンションを経営しているような場合は、主たる事業が会社員になるため、加入資格を満たさないことになります。

 

一方、小規模企業共済と違って、40カ月以上の加入で満額返金されるのが「経営セーフティ共済」です。連鎖倒産から中小企業を守ることを目的として作られた制度で、小規模企業共済同様に「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」が行っている共済制度です。この制度は、個人ではなく法人そのものが加入でき、しかも月額の掛け金は5000円から20万円。掛け金の積立限度額は800万円。毎年の掛け金は全額必要経費として損金計上できます。

 

この範囲で積み立てた掛け金は40カ月以上経過すれば、全額返金されます。ちなみに、個人事業者向けにも経営セーフティ共済はあるのですが、事業所得は認められていても、不動産所得は対象外となります。また、アパート経営などをしている個人事業主は使うことができません。ここにも法人設立のメリットがあります。

 

このセーフティ共済制度は、平成23年10月から、それまで8万円だった掛け金の上限が20万円に引き上げられました。さらに、320万円だった掛け金の積立限定額の上限も800万円まで拡充されました。

 

銀行のローン返済、妻や子どもへの役員報酬、そして経営セーフティ共済での掛け金という具合に、これらを併せて活用すれば、アパート・マンション1棟程度の賃貸収入ぐらいなら、全額損金として計上できるかもしれません。つまり、法人税をゼロにすることが可能になるということです。

 

同共済は、退職金の積み立て目的以外にも、アパートの大規模修繕費用の積み立てなどにも使えます。不動産の大規模修繕は賃貸ビジネスには不可欠なイベントです。毎年一定額を積み立てていくことで、必要になったときに全額解約して工事代に充てることができます。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続税は不動産投資と法人化で減らす』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

成田 仁

ソリッド(株) 代表取締役社長

1965年生まれ。マンションデベロッパー、財閥系不動産仲介会社等を経て、不動産会社を設立。投資のアドバイスや上場企業へのコンサルティング等、難易度の高い業務を手掛ける。2001年に収益不動産のコンサルティングおよび不動産売買を主な業務とするソリッド(株)を設立。一棟投資物件検索サイト「家賃どっと入りコム」の運営や相続専門の相談も受け付けている。

著者紹介

富田 隆史

富田隆史税理士事務所、A&Tコンサルティング(株) 代表取締役

1969年生まれ。2003年1月に富田隆史税理士事務所を設立。その後、不動産鑑定士と税理士のダブルライセンスを強みとし、2006年にA&Tコンサルティング(株)を設立。資産税に特化し、不動産鑑定・税務コンサルティングを精力的に行っている。また、法人を活用した相続税対策や不動産投資など、資産家向けセミナー講師としても活躍している。

著者紹介

連載プライベートカンパニーの設立で相続税を節税する方法

相続税は不動産投資と法人化で減らす

相続税は不動産投資と法人化で減らす

成田 仁,富田 隆史

幻冬舎メディアコンサルティング

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