今回は、ミャンマー人との取引で注意したい「嘘」や「言い訳」を見ていきます。本連載では、日本ミャンマー支援機構で約300社の海外進出のサポートを行ってきた日本人アドバイザー・深山沙衣子氏の著書、『ミャンマーに学ぶ海外ビジネス40のルール』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、ミャンマー人の国民性や彼らのビジネス慣習などを紹介します。

すべては「家族を養う」ために…

日本のビジネスシーンでも多少、「嘘」が必要なときがあります。相手を傷つけずに断るときに小さな嘘をついたり、面接時に自分の能力を少しばかり高く表現したりと、「嘘も方便」です。しかし、あまりに事実とは異なる嘘をつく人は、そう多くないでしょう。後に自分の首を絞めることになるとわかっているはずですから。

 

私がよく知るミャンマーについて、率直に言うと、とにかく「言い訳」が多い世界だと感じています。ミャンマー人を面接したり、雇用してみるとよくわかるのですが、「言い訳」は面接の段階からはじまっているので、私も話半分で進めながら本音を探っています。

 

もちろん日本にも、内定をもらっていても「家庭の事情で勤務開始日が伸びるかもしれません」と言いながら、裏でよりよい条件の転職先を探し続け、好条件の会社に入社を決める人がいます。ところが、ミャンマー人の就労希望者と日本人の雇用者という関係だと、「日本人はミャンマーの事情をあまり知らないから、うまく騙せる」と思っている節があります。ですから、「言い訳」と表現するよりも、「嘘」が正しいのかもしれません。

 

いざ雇用のためにと企業側が研修の手配などをすませた後、大きな「嘘」が露見し、実費的な被害を被った企業も知っています。

 

ある日本企業が、ミャンマーの現地で働いてくれるミャンマー人を日本で面接した際、「日本で学んだ語学力を母国で生かしたい」と言っていたので、現地の人事体制などを整え、入社の日を待っていました。しかし実際は、そのミャンマー人は母国で仕事をするつもりはなく、日本での仕事の継続が決まると、入社数日前にあっさりと断りを入れたのです。

 

なぜ日本で働くことにこだわるのかというと、日本円として外貨を得るほうが、ミャンマーで働くよりも実入りがよいからです。ミャンマーでは家族が揃って暮らしていて、一家を支えるだけでも苦労します。そんななか、言語に堪能な人がひとりでもいれば、その人が国外へ稼ぎに出て、一家の家計を支える稼ぎ頭になるケースが多く見られます。そうした人は家族を支えるために、何としてでも高待遇の仕事に就き、1日でも長く日本に留まりたいのが本音です。そのために、平気で嘘をつくのです。

一般的なミャンマー人は素朴で純粋

またミャンマーでは、「日本人とビジネスをしている人は稼げる人」という評判ができます。あながち外れではないのですが、稼ぐために「信仰心」すら利用する人も存在します。あるミャンマー人女性はきょうだい十数人と、子ども3人を養っているのですが、まさに「嘘」と実力で外貨を稼ぎ、ミャンマー社会でのし上がっています。

 

彼女は、日本に来日することが多いミャンマー人僧侶のお世話係(ケッピャーと言いますが)を買って出て、持ち前の日本語能力を生かし、僧侶とともに何度も来日していました。来日するたびに、日本人とのつながりをつくり、「信心深さ」をアピールするのですが、ミャンマーに帰るとケッピャーの仕事をしません。

 

まったく信仰心がないわけではないと思いますが、彼女の目当ては日本に滞在するための「ビザ」なのです。そして僧侶とともに来日しながら、ミャンマーで軍事政権とつながりの深い政商の代理業をして、ビジネス活動をしてきました。

 

海外経験に乏しい一般的なミャンマー人は、本来のイメージ同様、素朴で純粋、あまり嘘をつきません。ところが、富裕層、中流階級に属し、日本や海外とビジネスをするミャンマー人は、嘘を当たり前につきながら仕事をする人が目立ちます。この現象をみると、ミャンマーでは経済的に裕福になるために、嘘が必要な社会なのかもしれない、と感じるのです。

本連載は、2016年4月30日刊行の書籍『ミャンマーに学ぶ海外ビジネス40のルール』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ミャンマーに学ぶ海外ビジネス 40のルール

ミャンマーに学ぶ海外ビジネス 40のルール

深山 沙衣子

合同フォレスト

双方の歩み寄りが未来を開く! 異文化地域とのビジネスは言葉以上のカルチャーショックだらけ。 この一冊に相互理解のヒント満載。 ミャンマーを中心に約300社の海外進出のサポートを行ってきた著者が明かす、円満海外ビジネス…

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