「叱られる」のが好きな人はいないが・・・
どの世代も日本人社会では言われていることがあります。「最近の若者は……」というフレーズです。ここ数年ではゆとり世代が標的にされがちではないでしょうか。「叱ると拗ねる、へこんだまま立ち直らない、打たれ弱い」などと言われ、上司も叱ること自体が面倒になり、部下を叱らないケースも増えているという話を聞きます。
私自身は、叱られることでプラスになることがあると考えているし、実際に社会で仕事をするなかで、あのとき叱ってもらえてよかったと体験したことがいくつもあります。
部下の知識不足を指摘したり、ミスを注意して正しい方向へ軌道修正をしてくれる上司に恵まれました。ほかの社員がいる前で叱られるときは、恥ずかしさや悔しさもあったけれど、「自分がミスしたのだから仕方がない。次は気をつけよう」と、諦めにも近い気持ちで受け入れました。
この経験は、「私のために叱ってもらえた」ものですが、同じ日本人でも、叱られることに慣れていない人がいます。しかし、ミャンマー人と仕事をするときは、人前で叱ることは禁忌だと心得ておくとよいでしょう。
両親、教師、僧侶以外は人前で叱らない!?
以前ミャンマーで、ある男性社員が遅刻をしたので、仕事場で軽く注意をしました。すると彼は翌日から音信不通の無断欠勤を続けました。ようやく連絡がつくと、彼は電話でこう言いました。「家庭の事情で地方都市に行きます」と。しかし数カ月後、私たちの事務所がある同じヤンゴン市内の外資系企業で、彼が似たような業務に就いているのを知りました。
おそらく、音信不通の無断欠勤をしている間に、転職先を見つけていたのでしょう。ミャンマーで日本語や外国語ができる人材は転職もスムーズにできますから、ちょっとしたきっかけで優良な人材ほど転職してしまいます。
彼の転職のきっかけになったことは、日本人からすると本当にちょっとしたことです。人前で「遅刻の注意をした」だけですが、彼は「人前で叱られた」と感じてしまったのです。ミャンマーでは両親、教師僧侶以外の人が、人前で叱る習慣があまりありません。
だから、転職先のアテがない人は叱られても我慢していますが、引く手あまたな有能な人ほど、「俺がこんなことで叱られる筋合いはない」という発想をします。
優秀な人材を引き入れて仕事を一緒にしたい場合は、「人前で叱らない」で褒めて育てることです。加えて、したたかな考えではありますが、優秀な人材は常にチェックし、裏で人間関係をつくって強いパイプでつないでおくことが必要です。