今回も引き続き、相続前に長男が死去したことによるトラブル事例を見ていきます。本連載は、日本公証人連合会理事・栗坂滿氏の著書、『トラブルのワクチン―法的トラブル予防のための賢い選択―』(エピック)の中から一部を抜粋し、遺言、相続にまつわるトラブルとその予防・解決法を紹介します。

被相続人の意思が不明なら、法定相続の原則で判断

前回の続きです。

 

≪トラブルを避けるためのワクチン接種≫

要するに、本件のトラブルは、父親Aさんが遺言書で長男Bさんに全財産を相続させると書いたものの、万一自分の死亡以前にBさんが死亡した場合にどう考えるかについて記載していなかったことが招いたものといえます。

 

さらに、AさんはBさんが自分より先に亡くなってしまったのにその後、遺言の書き直しをしていなかったことも問題です。そして、遺言者の最終意思を推し測る手掛かりがないなら、法定相続の原則に戻ることになるのだろうと思われます。

遺言書作成時に「二次的な財産承継者」も記載する

そこで、遺言時にそのような場合を想定して予備的に財産の承継者を記載しておくことが良いでしょう。すなわち、財産を継がせようと考えていた長男Bさんがもし死んだらその子のDとEに継がせたいという考えなら、Bさんに全財産を相続させると記載した上で、二次的な財産承継者の記載もしておくべきです。具体的には、次のようになります。

 

 

この2の部分が「二次的遺言」とか「予備的遺言」と呼ばれるものになります。

 

もちろん、Aさんは、Bさんが亡くなった後に、その時点での財産承継者についての考えを新たな遺言を作成して明らかにしておけば問題はなかったのですが、その時点でもしAさんが認知症などの影響で判断能力が失われていたなら新たな遺言をすることも不可能となってしまいます。

 

そこで、やはり、そのような変則的な事態のことが気になる方は、そのような事態に備えて最初の遺言で予備的な記載をしておくことをお勧めします。

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    本連載は、2016年8月1日刊行の書籍『トラブルのワクチン―法的トラブル予防のための賢い選択―』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    トラブルのワクチン ―法的トラブル予防のための賢い選択―

    トラブルのワクチン ―法的トラブル予防のための賢い選択―

    栗坂 滿

    エピック

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