「経常収支比率」の分析だけでは予測できない企業の倒産

前回は、フローの支払い能力を測る「経常収支比率」について解説しました。今回は、「経常収支比率」の分析だけでは企業の倒産を予測できない理由を見ていきます。

経常収支がプラスの倒産企業が45%も

実際に倒産した企業の、倒産前の経常収支比率を見てみましょう。

 

私の経営する会社が持っている決算書データのうち、倒産した企業は8764社になります。その8764社の倒産前の経常収支比率を調べると、プラス(100%以上)であった企業が45.37%、マイナス(100%未満)だった企業が54.63%となりました。

 

【図表】 倒産企業の経常収支比率

出典:アロックス株式会社が保有する財務データベースから作成
出典:アロックス株式会社が保有する財務データベースから作成

 

ご覧の通り、倒産企業の半数が資金収支マイナスで倒産しています。ということは、倒産企業の残り半数は、収支がプラスで倒産しているということです。

 

この結果からすると、経常収支比率による評価は、倒産企業が赤字だったか黒字だったかという評価に比べると若干マシではありますが、とても倒産を判別するレベルには達していません。

 

たしかにマイナスのほうがちょっと多いですが、収支がプラスの倒産企業が45%もあります。半々では、サイコロを転がして「偶数か、奇数か」というのと大差ありません。

 

なので、ただ単に企業の本業の資金収支を評価するだけでは、倒産を予知することなどできないことになります。

「経常収支比率」だけを見ても意味がない

ここには大きな見落としがあります。

 

経常収支比率は、本業の収支がプラスであったか、マイナスであったかを示すものでしかありません。

 

先ほどの住宅ローンの話に当てはめてみると、給料から生活費を引いてプラスかマイナスかを見ているだけなのです。たとえ給料から生活費を引いてプラスであったとしても、住宅ローンを支払えるほどにプラスでないなら、返済という点からするとあまり意味がありません。

 

企業にも、経常支出(1年間の経常活動費用)以外にも発生する大きな支払いがあります。それは借入金です。

本連載は、2016年10月12日刊行の書籍『取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載「決算書分析」で取引先の支払い能力を見極める方法

アロックス株式会社 代表取締役社長

大学卒業後、機械メーカーの営業職を経て、「倒産リスク情報」を販売する企業に入社。商社や金融機関、メーカーの調達部門などを中心に、数多くの企業の与信管理業務やサプライヤ管理業務をサポートする。2013年3月、アロックス株式会社を設立。決算書に基づいた倒産リスク評価を行うソフトウェア「アラーム管理システム」を提供し、「決算書を読めない人の数をゼロにする」ことを目標に、システム開発やセミナー等を行っている

著者紹介

取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意

取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意

田中 威明

幻冬舎メディアコンサルティング

分業化、グローバル化が進んでいる現代にあって、自社のみで事業を営むことはできません。取引先の経営状況を正確に把握することは、これからの時代を勝ち残るために必要不可欠です。 しかし、教科書的な決算書分析の手法で、…

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