正式な法律用語ではない…「倒産」の定義とは?

前回は、指標から分かる「黒字決算」で倒産する企業の割合を説明しました。今回は、 「倒産」の定義について見ていきます。

「倒産」とは事業において「支払い不能」になる状態

そもそも、企業の倒産とは一体どのようなものなのでしょうか。「倒産」という言葉は広く使われていますが、その意味は果たして本当に正しく理解されているのでしょうか。

 

一般的に倒産とは、企業がつぶれてなくなることだと理解されています。実際に、千代田生命保険などは、倒産によって会社自体が消えてなくなりました。ジブラルタ生命保険に吸収合併されて、会社名が消滅したのです。しかし、事業はそのままジブラルタ生命保険に継承されたため、千代田生命保険の加入者が放り出されることはありませんでした。

 

倒産しても、会社名が残ることもあります。たとえば、あれだけ新聞やテレビで「倒産」と騒がれた日本航空(JAL)は、今でも企業として存続し、毎日、世界中の空に飛行機を飛ばしています。

 

なぜかといえば、会社更生法によって再建を果たし、新たな日本航空株式会社として復帰したからです。このケースでは、一旦は倒産したものの、再生がかなったため、社名が存続することになったのです。

 

また、百貨店のそごうも一度は倒産しましたが、そごうの名前を持つ百貨店は今でも存在しています。

 

そごう百貨店の場合は、倒産した後、民事再生法によって再建を果たしました。この際に、西武百貨店の支援を受けたため、現在は経営統合して、株式会社そごう・西武となっています。運営会社の名前こそ、そごう・西武となったものの、百貨店の名前はそごうのままとなっています。

 

このように、一口に「倒産」と言っても、様々な事例があります。倒産しても、会社や社名がなくならないケースもあれば、きれいさっぱり会社の姿が消えてしまうケースもあります。

 

ただし、いずれにせよ、「倒産」は会社運営の破綻であり、再建をするにせよ、一度は白旗を上げねばならない事態であることは確かです。

 

実は「倒産」とは、正式な法律用語ではありません。信用調査会社のウェブサイトには「倒産の定義」として、次のような説明が掲載されています。

 

企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態

 

倒産は正式な法律用語ではないため、各社によって多少定義が異なりますが、ほぼこの定義と同様です。そして、この倒産の定義を見ると、赤字かどうか、売上が減っているかどうかは、直接には関係ないことがわかります。倒産とは、「弁済しなければならない債務が弁済できなくなる」ことであり、簡単に言えば、支払い不能のことだからです。

 

ちなみに個人の場合は、債務が「支払い不能」になっても「倒産」とは言いません。「倒産」とはあくまでも事業が「支払い不能」になる状態を指します。個人事業主であれば事業の「倒産」はありますが、個人の「倒産」はありません。

企業が倒産にいたる6つのケース

信用調査会社はさらに、倒産を、具体的に以下の6つのケースに分類しています。

 

⒈ 銀行取引停止処分を受ける

⒉ 内整理する(代表が倒産を認めた時)

⒊ 裁判所に会社更生手続開始を申請する

⒋ 裁判所に民事再生手続開始を申請する

⒌ 裁判所に破産手続開始を申請する

⒍ 裁判所に特別清算開始を申請する

 

1は、銀行から取引停止処分を受けて、結果的に倒産に至るケースです。

 

銀行から取引停止処分を受けると、2年間にわたって当座取引などができなくなるため、事実上事業継続が困難になり、倒産となります。

 

手形や小切手が不渡りとなってから6カ月以内に、再度手形や小切手の不渡りが起きた場合、銀行が取引停止を行うため、倒産と見なされます。銀行取引停止となると金融機関での決済ができなくなるため、事業活動ができなくなるからです。

 

2016年に、カレーライスのチェーンCoCo壱番屋の廃棄ビーフカツの横流しが発覚した産業廃棄物処理業者のダイコーが、銀行取引停止で倒産に至っています。

 

2は、社長自ら白旗を上げて、債権者と交渉をして内々に事業を整理するケースを指します。「任意整理」や「私的整理」などとも呼ばれます。「内整理」とは、法的手続きによらず、債権者と債務者との話し合いで会社が整理されることになった場合を指します。

 

なお、債務超過ではなく、債権者に迷惑をかけずにきれいに「休業」「廃業」する場合は、倒産とはカウントされません。「弁済しなければならない債務が弁済できなくなった」わけではないので、倒産には含まれないとされています。

本連載は、2016年10月12日刊行の書籍『取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載「決算書分析」で取引先の支払い能力を見極める方法

アロックス株式会社 代表取締役社長

大学卒業後、機械メーカーの営業職を経て、「倒産リスク情報」を販売する企業に入社。商社や金融機関、メーカーの調達部門などを中心に、数多くの企業の与信管理業務やサプライヤ管理業務をサポートする。2013年3月、アロックス株式会社を設立。決算書に基づいた倒産リスク評価を行うソフトウェア「アラーム管理システム」を提供し、「決算書を読めない人の数をゼロにする」ことを目標に、システム開発やセミナー等を行っている

著者紹介

取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意

取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意

田中 威明

幻冬舎メディアコンサルティング

分業化、グローバル化が進んでいる現代にあって、自社のみで事業を営むことはできません。取引先の経営状況を正確に把握することは、これからの時代を勝ち残るために必要不可欠です。 しかし、教科書的な決算書分析の手法で、…

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