前回は、「支払い可能資産」の実態を見抜く方法を説明しました。今回は、会社が「倒産」に至るプロセスについて見ていきます。

外部から見ているだけで倒産の兆候を見抜けるのか?

「倒産」とは、企業の死です。

 

ただ、どこかの企業が倒産したというだけであれば、社会の自然淘汰であり、生命の円環が回っているだけのこと、と冷静にやり過ごすことができます。ところが自社の取引先が倒産したとなれば、落ち着いていられません。

 

取引先企業が倒産すると、自社の売掛債権が回収できなくなったり、あるいは予定していた原材料や商品が入ってこなくなったりするからです。

 

それによって、自社の事業が一時的に滞る程度ならまだいいのですが、影響が大きい場合には、自社も連鎖倒産しかねません。

 

ですから、取引先企業が倒産しないかどうかのチェック・評価は、企業にとって非常に重要です。

 

しかし企業の倒産というものは、果たして外部から見ているだけでその兆候がわかるものでしょうか。

 

倒産する企業は、売上が減少したり、資金繰りが混乱したり、悪い噂が流れたりします。ですから一般的には、外部からであっても丁寧に観察していれば、その兆候がわかるとされています。

 

私は、そのような一般論に疑問を持っています。

「業績不振→恒常的な赤字→倒産」は少ない!?

実は、私は以前に勤めていた企業で、倒産に近い状況を経験しています。経営陣が何度も代わり、大規模な人員整理があり、給料を減給され、仕入れ先への支払いの延期をお願いしたりしました。また、一部の債権者への支払いを棒引きにし、税金の滞納もありました。果ては会社の売却先探しを指示され、最後には、2、3カ月分の給料が支払われませんでした。滞納していた家賃も結局全額払えなかったはずです。そんな状態ではありましたが、何とか倒産には至りませんでした。

 

その経験から言えば、実際に倒産がどのようなものなのか、そして、どのようなプロセスを経て企業が倒産するのか、一般論ばかり言われていると感じます。

 

たとえば、経営コンサルタントや、公認会計士などが書いたものを読むと、一般的に、倒産に至るメカニズムとは、次のようなものだとされています。

 

倒産する企業はまず売上が下がり、それによって収益性が低下し、赤字となり、債務超過になって、最後にやむを得なくなって倒産する。

 

簡単に言えば、業績不振→恒常的な赤字→倒産というプロセスです。私は、このイメージが正しいとは思っていません。

 

正確に言うと、確かにこのような流れの倒産もあるとは思いますが、それはあまり多くないのではないかと考えています。

 

実際の倒産は、必ずしもこのように、きれいに説明できるものばかりではなく、むしろこういう倒産のほうが少ないのではないかと考えています。

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    本連載は、2016年10月12日刊行の書籍『取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    田中 威明

    幻冬舎メディアコンサルティング

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