倒産の危険性を予知する「5つの指標」の具体的な見方

前回は、会社の支払い能力を評価する上で効果的な「5つの指標」について解説しました。今回は、その「5つの指標」の具体的な見方を解説します。

倒産予知を行う5つの指標とは?

① 売上債権回転期間

売上債権(受取手形+売掛金)が、現金として回収されるまでの期間を示す指標です。計算式は「売上債権÷月商」で、何カ月分の売上債権があるかを知ることができます。

 

② 棚卸資産回転期間

棚卸資産回転期間とは、棚卸資産(在庫)をどれくらい効率的に減らしているかを示す指標です。

 

計算式は「棚卸資産の金額÷月商」で、売上に対して棚卸資産(在庫)を何カ月分抱えているかを知ることができます。言い換えれば、棚卸資産(在庫)を販売するためにかかる期間を知ることができます。

 

③ 借入金月商倍率

借入金÷月商

借入金が月商の何倍あるかを見る指標です。借入金が多すぎる場合は、長期的に返済に追われるので、徐々に資金繰りが苦しくなっていきます。

 

④ 運転資金月商倍率

((売上債権+在庫)−仕入債務)÷月商

運転資金月商倍率とは、運転資金が月商の何倍あるかを見る指標です。

 

必要な運転資金の金額を、月商を基準として見ることで、日々の経営活動での資金繰りが逼迫していないかどうかを知ることができます。

 

ここで言う運転資金は、「売上債権+在庫-仕入債務」で計算しています。

 

運転資金の金額が大きくなると、それだけ多くの資金を手元に残さねばなりませんから、資金繰りの負担が大きくなります。

 

⑤ 現預金月商倍率

現預金÷月商

現預金月商倍率は、現金と預金が月商の何倍あるかを見る指標です。いざという時に現金や預金がどれだけあるかが、倒産を回避できるかどうかの分かれ目になるからです。

「資金繰り粉飾の危険性」が判明した事例

【図表】は、この企業の前述の5つの項目を過去3年間にわたって抜き出したものです。

 

【図表 ある倒産企業の決算書分析②】

 

運転資金月商倍率は、2012年には7.6カ月でしたが、2013年には8.1カ月、2014年には9.2カ月と、徐々に増えています。

 

これは、売上債権の回収がうまくいかなくなったのか、売れない在庫が積み上がってしまったのか、運転資金月商倍率が上がれば、会社はより多くの資金が必要になります。

 

一方、現預金月商倍率は、ここ3年間、ほとんど0.5倍で変わっていません。会社の現預金は月商の半分程度しかなく、運転資金がより多く必要になっても、増えることはありませんでした。これだけでも、資金繰りに対する不安が感じられます。

 

次に、借入金月商倍率ですが、こちらはほとんど変化がありませんが、常時7倍程度あったことを考えると、会社の体力に比して、借入金の額が大きく、経営を圧迫していたであろうことが想像できます。

 

2013年に、固定資産が大きく減っています。さらに細かく決算書を見ると、土地の計上がなくなっています。損益計算書(PL)の特別損失を見ると、固定資産売却損が計上されているため、この会社が損失覚悟で土地を売ったことが推測されます。つまり、損を出してでも、土地をキャッシュに変えたい「何か」が、2013年に起こったことが推測されます。

 

このように、単なる安全性分析ではなく、資金繰り粉飾の危険性を勘案していれば、この会社の倒産の危険性が高いことは、十分に予測できたのではないでしょうか。

本連載は、2016年10月12日刊行の書籍『取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載「決算書分析」で取引先の支払い能力を見極める方法

アロックス株式会社 代表取締役社長

大学卒業後、機械メーカーの営業職を経て、「倒産リスク情報」を販売する企業に入社。商社や金融機関、メーカーの調達部門などを中心に、数多くの企業の与信管理業務やサプライヤ管理業務をサポートする。2013年3月、アロックス株式会社を設立。決算書に基づいた倒産リスク評価を行うソフトウェア「アラーム管理システム」を提供し、「決算書を読めない人の数をゼロにする」ことを目標に、システム開発やセミナー等を行っている

著者紹介

取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意

取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意

田中 威明

幻冬舎メディアコンサルティング

分業化、グローバル化が進んでいる現代にあって、自社のみで事業を営むことはできません。取引先の経営状況を正確に把握することは、これからの時代を勝ち残るために必要不可欠です。 しかし、教科書的な決算書分析の手法で、…

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