今回は、「経理担当が銀行出身」の場合に多いとされる、流動負債の増大という財務上の問題を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「流動負債>流動資産」なら資金繰りは当然に苦しい

「えっ? これはどういうこと?」という面積グラフを見かけることがあります。例えば次のような面積グラフです。

 

 

短期借入金がやたらと多く、そのため、流動負債が流動資産よりも大きくなっているのです。面積グラフで見ると、右側の黄色部分が、左側のオレンジ部分よりも大きくなっていますね。

 

流動資産は1年以内に現金化されるもの。流動負債は1年以内に払うべきもの。

 

払うべきものが大きいと、資金繰りが苦しいに決まっています。で、短期借入金が何に変わっているのかというと、土地や投資などの固定資産が中心です。短期借入で調達しても、返済できるはずがありません。その結果、短期借入を転がして再度借り入れ、金利だけ支払う、ということが続いてしまうのです。

 

「どうしてこんな借り方をしているんですか?」と尋ねると、次のような返答が多いのです。

 

「銀行出身の経理担当者に任せていたのですが・・・・」

「銀行にとってありがたい借り手」になっていないか?

そうです、このような事例は、銀行出身者が経理担当をしている、という場合に多いのです。このような借り方をしていれば、銀行に対して本人はいい顔ができるから、なのでしょう。

 

何せ銀行にとっては、融資した借入金が減らず、金利だけ延々と払ってくれる、というのが一番ありがたいのですから。この面積グラフだと、まさにそのパターンに陥っているわけです。そして、担保や個人保証、保証協会を使って、リスクヘッジはしているのです。

 

このようなパターンの場合、まずもって、返すだけの現金がありません。取り急ぎは、長期に借り換えて短期を減らし、流動負債が流動資産よりも小さくなるようにするのが先決です。長期になれば、毎月の返済額が小さくなります。少しずつでも、借入を減らしてゆく方向に変えてゆくのです。

 

で、土地を売るなり、投資を処分するなりして現金化する、さらには売却損を活用して税金のキャッシュアウトを減らし、返済原資に回す。といったことを進めてゆかねばならないでしょう。とにかく、経理担当者が元銀行出身者である、という場合には、上図のような面積グラフになっていないか、チェックしておくことが必要なのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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