団塊世代経営者の大量引退、中堅・中小企業M&A市場の急拡大
総務省の推計によれば、1947年からの3年間で起きた、第一次ベビーブームに生まれたいわゆる団塊世代は、2021年10月時点で約600万人近くいるとされています。少子高齢化が急速に進行しているなかで、2025年には団塊世代の中堅・中小企業経営者の多くが引退することが予想されています。
中堅・中小企業においては創業者や現在の経営者の引退の数に比して、特に事業を引き継ぐ後継者不足が深刻な問題となっています。業種を問わず、後継者不足から実際に廃業を余儀なくされる企業・事業者も年々増えてきました。
東京商工リサーチが発表した2022年の後継者難倒産は422件(前年比10.7%増)に上り、調査を開始した2013年以降最多で、初の400件超えとなっています。このように後継者難倒産をする企業が増え続けているという厳しい現実があります。後継者難倒産とは、経営者から事業を引き継ぐ後継者の不在、経営者の病気や死亡、または事業承継の失敗などの原因により、事業継続の見込みが立たなくなって倒産してしまうことをいいます。
実際、業績自体は問題ないのに事業承継がうまくいかずに倒産せざるを得ないケースは、年々増加しています。しかし、そういった企業独自の技術やノウハウを存続させ、取り入れようと考える企業も多く、近年、中堅・中小企業のM&A(合併・買収)はかつてない活況を見せています。
M&Aの手法を活用して、第三者へ承継するケースも増えている
M&Aというと大企業同士の合併や買収がメディアで取り上げられますが、近年は中堅・中小企業では後継者がいないなどの理由から、会社や事業の存続のためにM&Aの手法を活用して第三者へ承継するケースも増えています。
以前はM&Aになじみのない中堅・中小企業も多かったのですが、事業承継の選択肢として、また企業規模拡大や事業多角化の手段などとしても、中堅・中小企業にとって身近なものになりつつあります。
日本のM&Aは古く戦前からあり、当時は紡績業界や電力業界などの大企業を中心とした財閥や政府主導のM&Aが主流でした。一方、中堅・中小企業の場合は血縁や地縁といった関係性がすでにある企業間でしかM&Aが行われてきませんでした。
つまりまったく見ず知らずの第三者に会社を売却するという意識は一般的にはなかったのです。しかし現在では従来の地縁血縁関係に限られたM&Aでは対応できなくなり、結果的に倒産という選択をせざるを得ないケースが増えているのです。そうしたなか中堅・中小企業がM&Aを行う際に、仲介業者に依頼することで多くの候補先とのマッチングが可能になる「M&A仲介」というビジネスが増えてきています。その結果、中堅・中小企業の経営者に「M&A仲介」が事業承継などの選択肢の一つになり得る認識はここ数年で急速に広まっています。
川畑 勇人
Byside株式会社 代表取締役
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