資本市場のパワーをフル活用して繁栄を築く米国…真逆を歩んできた日本の「目指すべき道」とは【マネックスグループ会長・松本大氏が解説】

資本市場のパワーをフル活用して繁栄を築く米国…真逆を歩んできた日本の「目指すべき道」とは【マネックスグループ会長・松本大氏が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

米国の資本市場には世界中からお金が流れ込み、なおかつ国民の資産の一部が常に株式市場で運用される仕組みが整備されています。一方で、人口減少とともに経済が縮小に向かう日本は、これと真逆ともいえる状態にあります。本記事では『松本大の資本市場立国論』(東洋経済新報社)から著者の松本大氏が、米国と日本の違いを示しつつ、いま日本に必要なことは何かを解説します。

米国の年金は市場のリターンを下回ると違法になる

 

加えて、資金が資本市場に流入しやすいような仕組みもつくられています。

 

ちょっと金融に詳しい人なら、「エリサ法」という法律の名前くらいは聞いたことがあると思います。

 

ERISA(従業員退職所得保障法)という法律で、1974年に制定されたものです。これには企業年金を運用している機関投資家の受託者責任が記されています。

 

そして、この法律の条文のひとつとして、「企業年金のリターンは市場全体と同等か、それ以上を達成しなければならない」というのがあります。

 

市場と同等のリターンを実現するためには、集まってきた年金資金を全額、債券だけで運用することはできません。そんなことをしたら、年金のリターンは市場を上回ることができず、エリサ法に違反するからです。したがって、必然的に株式でも運用します。

 

同じことは、ケアテイカーといって、認知症になった人の資産管理を行っている人にもあてはまります。年金に課せられている受託者義務と同様に、ケアテイカーの資産管理でも、やはり市場の平均と同等か、それを上回るリターンの実現が規定されているのです。

 

したがって、管理している資産の一部には必ず、S&P500などの株価インデックスに連動するタイプのファンドを組み入れる必要があります。

 

つまり、人々の資産の一部が常に株式市場で運用されるような仕組みが、米国では整備されているのです。

 

翻って日本はどうでしょうか。日本はこれとはまったく逆で、相続が発生しそうになると、金融機関などは被相続人が持っている株式を、早々に売却させようとします。なぜなら、そのほうが相続しやすくなるからです。

 

株式だと銘柄によって株価は異なりますし、中途半端な株数では分割するのが困難になります。たとえば、相続人が3人いたとして、1000株の相続財産を三等分にしたくても割り切れません。

 

だから、相続手続きで余計な手間がかからないように、ひとまず株式を売却させるのです。株式を全部売却して現金化すれば、相続人の間でそれを分けることが非常に簡単になります。

 

これから団塊世代がどんどん高齢化するなかで、相続絡みの株式売却は、株式市場にとってはかなりの下げ圧力になってくるかも知れません。

 

だからこそ日本においては、あらゆる手段を講じて、株式市場に資金が流れる仕組みをつくることが求められるのです。

 

※書籍の『松本大の資本市場立国論』は、すべての漢字にルビ(読み仮名)が振ってあります。著者の松本大氏が、専門用語の漢字が多く、経済の本を読むことを敬遠していた人にこそ、この本を手にとって欲しいと思っているためです。ルビを振ることで、意味がわからない言葉や専門用語をスマートフォンの音声検索で調べることもできます。漢字にルビを振るという小さなことで、読者が広がり、日本がよくなることへの願いが込められています。

 

 

松本 大

マネックスグループ会長

 

※本記事は『松本大の資本市場立国論』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

 

 

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