これからの20年間が日本の明暗を分ける
人口減少に伴う日本の経済力低下は、わたしたちの身近な生活にも、さまざまな悪影響を及ぼします。
まず、円安が進むでしょう。2022年10月に一時的に1ドル=151円という円安局面があった後、2023年1月にかけて円高へと転じましたが、6月末にかけて再び円安が加速しています。
ひょっとしたら、10年後、20年後には1ドル=200円という、超円安時代が到来しているかも知れません。
ここまで円安が進むと、日本企業のドル建ての時価総額が大幅に目減りするため、外国企業から見ると、とても買収しやすくなります。
日本企業が外国企業に買収されたら、日本の優れた技術が海外に流出してしまいます。ますます日本企業の国際的な競争優位性が劣後して、日本企業の没落に歯止めがかからなくなります。
それは、日本企業で働いている大勢の人たちの生活水準の低下につながります。
しかも円安ですから、日本が海外から輸入している資源・エネルギー、原材料、食糧などの円建て価格が大きく上昇します。給与が下がる一方で物価水準が上がったら、わたしたちの生活水準は大幅に低下します。
そうなると、今度は人心の荒廃が始まります。
日本人は世界のなかでも、比較的品位があって、自分の欲求を前面に出すことなく、人に譲ることのできる人が多いという印象を受けますが、これは日本が戦後、経済が成長して豊かな時代を過ごしてきたからです。
経済的な豊かさが高じると、ゆとりが生まれます。そのなかから芸術や文化も生まれていきます。
それが逆にどんどん失われるような状態になると、恐らくモラルすらもどんどん失われていくでしょう。街にはゴミがあふれ、国全体がスラム化するなんてことも、十分に考えられます。
どうでしょう。少しは危機感を持っていただけたでしょうか。
人口の大幅な減少は、一国を亡ぼす恐れすらあるのです。だからこそ、何が何でも人口減少に歯止めをかけなければなりません。
そのために、さまざまな施策を講じる必要があるのですが、実際に人口減少に歯止めがかかったとしても、そのときに生まれた子供たちが大人になって、実際に経済活動に参加するようになるには、20年の歳月を要します。
だからこそ、この20年の間に何をするかによって、日本経済の明暗がはっきり分かれてくるのです。まさに、これからの20年は、日本経済にとって勝負の期間といってもいいでしょう。
松本 大
マネックスグループ会長
※本記事は『松本大の資本市場立国論』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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