労働収入と不動産収入の大きな差に気がついた人々
土地を持っていなかった4人は、なぜ、どのようにしてアパートを手に入れたのか、具体的に見てみましょう。
まず1人目は、先ほどお話しした、歌舞伎座での観劇やグアム旅行が楽しくてたまらない78歳の女性。彼女のだんなさんは税理士で、東京都大田区の大森駅から5分ほどのところに、5階建てのビルを建てました。
その人はたぶん、地主さんなどの帳簿をつける仕事をしているうち、労働収入と不動産収入の違いに気づき、「自分でもやってみよう」と思ったのでしょう。私も同じようなことを考えましたから、なんとなくわかります。
だんなさんが60歳過ぎで亡くなったあと、奥さんがそのビルを相続しました。私が会ったときには、とうの昔に借金を返し終わり、自由に優雅に暮らしていました。
アパートがなければ、貯金と年金を食いつぶしていた!?
2人目は、80歳の女性。とても明るく元気で、毎日フラダンスをやっていました。
彼女の人生は、なかなか波瀾万丈です。だんなさんはやはり税理士でしたが、事務所の女の子とできてしまったそうです。ある日、「全財産を渡すから、俺と別れてくれ」と離婚を切り出され、まとまったお金を手にした彼女は、神奈川県のとある場所で小料理屋を始めました。店の客が「女将、だんなさんはいるの?」と聞けば、身の上話が始まります。
お客の中に、銀行の支店長がいました。その支店長からアパート経営をアドバイスされた彼女は、別れた夫からもらった2500万円の貯金をはたき、同じ額の銀行融資を受けてアパートを持ちました。
彼女が住んでいるエリアには大学が2つあり、部屋を借りたい学生がたくさんいます。アパート経営は大成功を収め、やがて彼女は、3棟のアパートのオーナーとなりました。
ところが、私が彼女と会ったときには、すでにアパートは築40年を経過し、老朽化が進んでいました。そこで私は3棟とも売却し、そのお金で毎月分配型の投資信託を購入することを勧めました。彼女に子どもがいたら、アパートの建て替えを勧めたと思います。
念のため付け加えておきますが、毎月分配型の投資信託はコストが高く、資産形成時期の人にはあまりお勧めできません。この女性の場合は、税務申告やアパート修繕の手間をなくして毎月新しいお金を受け取るのが目的ですから、ライフステージにぴったりな運用方法でした。
小料理屋の仕事は、歳を重ねるほどにだんだんきつくなりますし、客足がまばらになれば、店をたたむしかありません。もし彼女が、アパートという「金の卵を産むニワトリ」を持っていなかったら、貯金を食いつぶしながら生活することになっていたかもしれません。