(※写真はイメージです/PIXTA)

離れて暮らす高齢の親を気にかけていても、コロナの流行で帰省を断念、今度は子どもの受験で断念……気が付けば実家に数年は帰っていない、なんてケースは少なくないでしょう。数年でそう変わらないだろうと思っていても、いざ実家に足を運んで驚愕するという人も。本記事では50歳長女Aさんの事例とともに、高齢親との関わり方について、FPオフィスツクル代表の内田英子氏が解説します。

2年ぶりの帰省…長女が目にした父の異変

Aさんは50歳、地元を離れ夫と子どもと一緒に暮らしています。地方都市のAさんの実家には、大手企業を長年勤めあげ、今は年金暮らしとなった75歳の父親が一人で暮らしています。

 

妹が2人おり、母親は9年前、持病により突然他界しました。母親が急逝した直後には、落ち込む父親の様子を見に、折を見て妹たちと協力し頻繁に帰省していました。しかし、コロナ禍と長子の大学受験等が重なり、電話やLINEでのやりとりはしていたものの、このところは実家には帰れていませんでした。

 

新型コロナウイルスの感染懸念もようやく和らいできたころ、Aさんは長子の大学受験と入学準備が一段落したのを機に、2年ぶりに帰省することにしました。

 

「ただいま」

 

2年ぶりの実家の玄関に足を踏み入れたAさんは、玄関先に段ボール箱がいくつも積み重なっているのに気づきます。宅配されてそのまま、であるようにうかがわれます。中身は定期購入しているサプリメントのようでした。

 

(お父さん、最近飲んでないのかな……)

 

「おかえり」

 

気になったものの、特に深く考えることなくリビングの扉を開けたとき、出迎える父親の姿を見てAさんは驚きます。

 

「お父さん、こんな服装……。熱中症になるよ」

 

Aさんが帰省したのは5月の日中です。5月とはいえ陽ざしは強く、実家まで歩いてくる道のりではじんわりとで汗をかく気候でした。初夏を通り越して夏本番といっても違和感のない気温にも関わらず、カーディガンに長ズボンという服装でした。

 

それに、口には出しませんでしたが、ひどく太ったようでした。もともと父親は小柄なほうです。厚着していることも相まってか、明らかに体形が変わっていることがわかりました。

 

(もしかして、認知症?)

 

ふとリビングのテーブルの上をみると、郵便物が山積みになっていました。

 

台所には、片付けられていないお菓子の袋やインスタント食品のカラが散乱していました。父に話を聞いてみると、「面倒だからすぐ食べられるもので済ませてしまうんだ。それに最近外に出ることが億劫でね……ちょっと太ったかもしれない」そう答えます。

 

(ちょっとじゃないよ……)

 買い物帰りに判明したさらなる衝撃事実

予想外の父親の姿を目にし、不安になったAさんはさらに尋ねます。

 

「お父さん、最近困ったことはない?」

 

大丈夫だよ、との答えが返ってきたものの、かえって不安は募るばかりです。

 

(もしかしたら介護施設とか、そろそろ考えたほうがいいのかな)

 

着替えしよう、と声をかけながら脇を見ると無造作に預金通帳が置かれていることに気が付きました。長く使っているメインバンクの通帳です。なんとなくパラパラとめくってみます。すると、記録されているのは2年前の日付が最後。しばらく記帳されていないようでした。

 

「お父さん、記帳たまってるね。記帳してこようか?」

 

その後、買い出しのついでに近くのATMで記帳したAさんは、衝撃の事実を目にします。2,000万円程度あった預金残高が大きく減っていたのです。差額はこの2年間でおよそ1,000万円、残高は900万円を切っていました。

 

大きな金額の変化に、見間違いかとも思いましたがそうではないようです。明細を追いかけようとも思いましたが、しばらく記帳していなかったためかおまとめ記帳、と書かれており明細がわかりません。残念ながら銀行の店舗は遠いうえに、窓口はもう閉まっています。そこで、父親に直接尋ねてみることにしました。

 

Aさんの父親の毎月の年金額は手取りで月約16万円です。75歳の年金受給者の平均年金額は以下のとおり月14万5,000円程度ですから、特別多いほうではありません。

 

しかし、退職時には退職金を含め3,500万円程度の資産があったそうです。というのも、実は父親がもともと勤務していた会社は、在職中に上場しており、長年勤務するなかで初期から持株会で積み立てた株式の売却益がかなり大きくあったのです。

 

(出典:厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)
[図表]年齢別老齢年金受給者数及び平均年金額
(出典:厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)

 

まとまった資産があったおかげで、退職後も住宅の修繕費用や自動車の買替え費用や母親の入院費用などのまとまった支出もこなしながら、生活費を取り崩してもお金に困ることはありませんでした。特に母親が急逝して以降は父一人で年金収入にあわせてつつましく暮らしていましたから、大きな生活費の取り崩しはありません。

 

実は、このところ立て続けに、3人の娘たちへ教育資金や住宅資金を支援していたそうなのです。

 

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