預金残高激減の真相
2年ぶりの帰省で衝撃の事実に直面したAさんは、筆者のもとへご相談にいらっしゃいました。
お父様が娘への贈与を立て続けに行ったきっかけは、おそらくご自身だろうと考えられていました。というのも、Aさんには子どもが2人いましたが、以前帰省した際、長子の大学受験対策と末子の急な転校を機に、教育資金を自分たちでは賄いきれなくなったそうです。そこで、お父様に資金援助を相談したのだそうです。3人の娘がいる以上、お父様からすれば公平に資金援助を、と考えたのでしょう。
このところの相続税に関連する改正を踏まえ、生前贈与に関心を持たれている方は増えています。しかし、生前贈与をする前には、その効果を確認しておきたいところです。相続税対策が必要であれば生前贈与は有効な手段の1つと考えられますが、相続税には基礎控除額もありますから、相続税対策が必要な方はある程度限定されます。
Aさんのご実家の事情をお伺いしましたが、法定相続人が3人いますから、自宅不動産を含めても相続税対策は必要なかったことが推測されました。むしろ自宅はわけることができませんから、生前に売却されないのであれば、急いで生前贈与を行うよりも遺言書を作成したり、子どものうち1人が相続することなどを想定した相続財産の流動性の確保など、相続の仕方でもめないための対策が必要だったと思われます。
とはいえ、いまとなっては使ったお金は戻ってきません。幸いお父様の生活費は年金で賄えていますし、介護サービスが必要になっても、選べるものは限られてきますが、なんとかなりそうです。
ただ、まだまだ子どもの教育費もかかるAさんにとっては、将来の老後資金準備にも不安がありました。そこでライフプランシミュレーションを行い、Aさん自身の老後資金や子どもの教育資金も確保しつつ、父親の支援に拠出可能な金額の上限を算出し、父親へのサポート方法や介護保険サービスの利用を考えていくことにしました。
生前贈与をする際には事前に家族での「コミュニケーション」を
後日Aさんからご連絡をいただきました。お父様の認知機能もそれほど衰えていないことがわかり、今後はこまめにコミュニケーションをとりながら、姉妹で協力して帰省し、介護保険サービスの利用を検討していこうと話されているそうです。
お金のことはこれまで話せずにいたけれど、これを機に家族全員で話せてよかった、とおっしゃっていました。老後も必要になるお金はいくつかある一方で、年を重ねるとこれからの生活を独力で見通すことは難しくなります。また、見通せたとしても、すぐによりよい答えが見つけるものでもありません。
お金よりも大切なものはいくつもありますし、お金について話すことははばかられることも多いです。しかし、Aさんのように、お金について客観的に見て周囲と一緒に話すことができれば、ご本人の晩年をよりよいかたちで迎えられるような暮らしの適解に近づけることもできるのかもしれません。
内田 英子
FPオフィスツクル
代表
注目のセミナー情報
【国内不動産】5月13日(月)開催
銀行からフルローンを引き出す「最新不動産投資戦略」
利回り7%超!「新築アパート投資」セミナー
~キャッシュフローを最大化させるためのポイントも徹底解説
【国内不動産】5月16日(木)開催
東京23区×新築×RC造のデザイナーズマンションで
〈5.5%超の利回り・1億円超の売却益〉を実現
物件開発のプロが伝授する「土地選び」の極意
【事業投資】5月25日(土)開催
驚異の「年利50% !?」“希少価値”と“円安”も追い風に…
勝てるBar投資「お酒の美術館」とは
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走