(※写真はイメージです/PIXTA)

初心者の方が金融商品を選ぶとき、しばしば「複雑な商品」に目を奪われてしまいがちです。販売員の巧みな説明とあいまって、商品が一層魅力的に感じられるようですが、商品のリスクを理解できないまま購入するのは厳禁です。経済評論家、塚崎公義氏が解説します。

「腕によりをかけました」…料理ならうれしいが、金融商品なら?

レストランは、素材の味はもちろん、なんといってもシェフが腕によりをかけた味付けを楽しむところです。栄養面だけを考えるなら、素材と調味料を別々に口に入れたとしても、どうせ胃の中で消化されるわけですから同じことですが、それでは〈人生を楽しむ〉という大事な目的が達成されません。

 

しかし、金融商品は違います。金融機関が高い手数料(コスト)を課して複雑な金融商品を作ったとしても、単品を別々に買うのと原則同じことですから、安いほうを選べばいいのです。

 

たとえば保険でいえば「保険料を掛け捨てにするのはもったいないから、貯蓄型保険(積立型保険)に加入する」という人も多いようですが、それなら国債を購入して金利を受け取り、それで保険料を支払う方がいい、という場合も多いでしょう。

 

掛け捨ての保険は各社とも似たような商品を出しているので、高い手数料を上乗せしにくいですが、貯蓄型保険であれば高い手数料を上乗せしても顧客に見破られにくいですから。

複雑な投資商品は「コスト」と「リスク」に要注意

投資商品についても同様です。プロたちは、投資初心者には理解できないような商品を作って、複雑な計算をして「妥当な価格」を求め、それに高額の手数料分を上乗せして販売することがあるはずです。

 

たとえば「判定為替条項付きデュアルカレンシー債」という債券があります。払い込みと利払いが円建てで、償還は原則として外貨建てであるけれども、判定日に一定以上の円安であれば償還も円建てで行われる、といった債券です。初心者には妥当な金利が計算できないので、プロが考える妥当な金利より相当低い金利を支払うことになっている可能性に要注意です。

 

投資商品の場合は、「手数料」に加えて、思わぬリスクを抱え込む可能性があることも問題です。「ノーベル経済学賞を受賞した経済学者が複雑な数式を駆使して開発した最先端の新商品です」などといわれても、どんなリスクがあるのか理解できないなら、手を出すべきではなさそうです。

 

「高い金利を支払う債券です。ただし、償還日にトヨタの株価が半分以下になっていたら、現金の代わりにトヨタの株券を渡します」といった商品は、高い金利の魅力に惹かれて投資する初心者も多いようです。

 

これならなにがリスクなのかは初心者でも理解できるでしょうが、トヨタの株価が半分になる確率は計算できないでしょうから、やはり「思わぬリスク」を抱え込む可能性があります。

 

しかも「高い隠れ手数料」を取られる可能性が大でしょう。プロ同士が「トヨタの株が半値になったら損失を補填する保険」を売買するとした場合の「保険料」は、プロが計算すれば求められますので、それより低い保険料を「上乗せ金利」として投資初心者に支払っている、という可能性です。

 

そんな債券を買うくらいなら、トヨタの株を買うことも検討してみましょう。結構高い配当がもらえますし、株価が値上がりして儲かる可能性も出てきます。なにより、多くの人が株を買わない理由としている「株価が暴落するのが怖いから」という理由がないのですから(笑)。

「損失限定」の投資商品を買うべきでない理由

「元本の7割は保証します」といった投資信託も、要注意です。内容をよく見ると「預かった資金の半分で株を買い、残り半分で国債を買います」と買いてあるかもしれません。

 

業者としては、株価が6割以上下落すると損をすることになりますが、そんな可能性は非常に小さいですし、どうしても心配なら「株価暴落保険」とでも言うべき取引(プットオプションの購入といいます)をすればよいのです。そんな保険なら安く入れるでしょうから。

 

そして、国債で運用している部分についても顧客から運用手数料が受け取れるのですから、大変オイシイ取引です。客から見れば、不要な手数料を支払っているわけです。

 

そんなことなら、投資予定額の半分で普通の投資信託を買い、残りの半分で国債を買えばいいでしょう。支払う手数料が半分で済むわけですから、株価が6割以上暴落するリスクくらい覚悟できるでしょう。

 

検討に値するのは「預かった資金は全額を株で運用します。そして、預かった資金の7割は保証します。ただし、手数料は高いです」という投資信託です。冒頭、単純な金融商品を個々に買えばよい、と記しましたが、株価暴落保険はプロ同士の取引ですから投資初心者は買うことができません。そこで、プロに保険を買ってもらうしかないのです。

 

そうはいっても、手数料率はよく見ましょう。プロが買った時の保険料より高いことは間違いありませんし、かなり上乗せされている可能性もあるでしょう。そんなことなら、「投資予定額の半分だけ普通の投資信託を買い、残りの半分で国債を買う」という選択肢も検討してみましょう。

 

株価が上がったときの儲けは半分になってしまいますが、株価が下がったときの損も半分になります。暴落した時には損をしますが、その代わりに業者への手数料支払いは安くなり、国債の金利を受け取れますから、悪くないと思いますが。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

■入所一時金が1000万円を超える…「介護破産」の闇を知る

 

■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録