(※画像はイメージです/PIXTA)

自民党の宮沢税制調査会長は11月8日、退職金への課税の見直しを10年~15年後から始めるのが望ましいとの見解を示しました。政府は6月に「骨太の方針」で退職金への実質増税の方針を示しており、もし10~15年後に実現するならばいわゆる「就職氷河期世代」が定年退職する時期にあたります。本記事では、現行の退職金への課税制度の概要を紹介したうえで、政府の方針の中身と、指摘されている問題点について解説します。

退職金に関する現行の税制はどうなっているか

まず、現行の退職金に対する税制について解説します。

 

退職金を受け取ると、「退職所得」として所得税の課税対象となります。ただし、税負担が軽減されます。そして、その軽減の度合いは、勤続年数が長いほど優遇されるルールになっています。

 

すなわち、退職所得の計算式は勤続年数5年以下と5年超とで区別されており、以下の通りです。

 

【退職所得の計算式(勤続年数5年超)】

(退職金額-退職所得控除額)×2分の1

 

【退職所得の計算式(勤続年数5年以下)】

150万円+(退職金額-退職所得控除額-300万円)

 

これらの計算式に登場する「退職所得控除額」は、以下の通り、勤続年数に応じて決まっています。

 

【退職所得控除額の計算式】

・勤続20年以下:40万円×勤続年数 ※最低80万円

・勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

 

退職金がこのように税制上優遇されているのは、退職金が以下の2つの性格をもつからです。

 

【退職金の性格】

・在職中の給与の後払い的な性格をもつ

・退職後の生活資金となる

 

このような性格から、税負担を軽減しなければ酷だと考えられているのです。

2023年6月の「骨太の方針」で示された「見直し」の中身とは

2023年6月に政府が示した「骨太の方針」において、この現行の退職所得課税制度を見直すことが盛り込まれました。勤続年数が長い人が優遇される現行制度を見直すというものです。

 

退職所得控除額を一律にするか、これまでとは別の制度を新たに設けるのか、明示されてはいません。しかし、2022年10月18日に開催された政府の税制調査会において、一部の委員から、退職所得控除額について勤続年数で差を設けず、一律にすべきだという案が提起されていました(政府税制調査会「説明資料(個人所得課税)」参照)。

 

「骨太の方針」で現行の制度を見直すべき理由として挙げられたのは、「成長分野への労働移動の円滑化」です。

 

すなわち、現行の退職所得控除の制度があるせいで、「あと~年勤務すれば退職金の税金が安くなるので、それまで転職しない」「長く勤務すれば退職金の税金が安くなるから定年まで転職しない」などの行動につながり、「成長分野への労働移動の円滑化」が阻まれるというのです。

 

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